お前にホの字・2(前編)

○ひみつのホッコちゃん

キーンコーンカーンコーン。

今日も授業が平穏に終わって放課後!皆は部活に向かったり街へガールハントへ出かけたりとイソイソ!でも、あれぇ?秘密のホッコちゃんはとってもつまらなそう!足取りも重く、国会で時々行われる全く意味のない牛歩作戦並みのスピードでしか進んでいないぞ?どうした、ホッコちゃん!!

「あ~あ、今日もすっげー暇だったなぁ…誰か日本でクーデター起こして軍事政権でもおっ立ててくれないかなぁ…魔法のコンパクトでヤッちまおうかなぁ、サクッと」
「ちょ、ちょっと何恐ろしいこと言ってるのさ!ホッコちゃんはその気になればサクッと出来ちゃうんだから!」
「あーら、誰かと思ったら隣のクラスの幼馴染み、モモコじゃない。どうしたの?お父さんの子でも孕んだ?」
「はぁ!?」
「冗談だよ」
「重いよ!勝手に近親相姦キャラに仕立て上げようとしないでよ!」
「その後弟のカン平とはどう?」
「その後ってどの後!?私の何を知ってんだよ!あー、違う!こんなこと話に来たんじゃなかった!」
「じゃあ何しに来たの、うざった…あ、うざったい!」
「なぜ言い直すんだよ!」
「いや、ちょっと勢いが…」
「いらないよ!もういいや、とりあえずね、今日ホッコちゃんのとこに来たのは他でもない、あるお願いがあったからなの」
「なに、あなたのお父さんはあなたのお母さんをまだ愛しているのよ?」
「勝手に何言ってんだよ!疲れんだよ!知ってるよ!しかも“まだ”って何だよ、そろそろダメになっちゃうみたいな言い方すんな!そんなお願いじゃありません!」
「じゃあサクサク本題に入ってよ、あたいのスケジュールだって分刻みなんだから」
「すごく暇そうにしてたじゃない…実はね、私好きな人が出来たの」
「お父さん?」
「違う!私も私のお父さんも普通!」
「違うわよ、あたいのお父さんの話よ」
「なんでホッコちゃんのお父さんに恋しなきゃいけないの!?」
「ほら、モモコって好きじゃない?おじさん」
「なに倒置法使ってんだよ!また勝手なキャラ設定しないでよ!あんたの父親なんて知らねーよ!そうじゃなくて隣のクラスの既無羅侘苦夜くんだよ!」
「ええなにその名前!キモッ!画数多っ!」
「ホッコちゃんに言われたくないな…」
「で、そのたくやくんとどうしたいの?ハメて欲しいの?」
「コラーッ!」
「彼の一分を独り占めしたいわけね」
「コラーッ!何言ってんだよ!いいよ、無理に流行りを追わなくても!」
「オーケーオーケー、つまりあたいの魔法のコンパクトでチョチョイと誰かしらに変身して、何とかしてあんたのことを好きっぽい感じにしてくっつけて、最終的にはハメたいのね?」
「大まかにはそうだけど最後の部分は訂正してよ!なに、どうしたの?溜まってんの!?」
「よし、分かったわ、そうと分かれば話は簡単♪お茶の子さいさい、うちの子四歳、ついでにうちのパパは四十二歳、厄年よ!」
「ねぇどうしたの!?大丈夫!?親子共々!!」

―所変わって街のゲームセンター―

「ここにいんの、その盲目の武士は」
「だからいいって気にしなくて!」
「あ、鉄拳だ!」
「聞いてる!?」
「しかも往年の名作、2!」
「アーケードで!?なんでそんな古いのが!?」
「あ、もしかしてあのハンサムボーイがたくやくん?」
「そうそう!あのハンサムイケメンがたくやくんよ!」
「なに、かっこいいじゃない!」
「でしょでしょ?」
「なーによ、このー!ちゃっかりエンジョイ高校ライフしちゃって~!」
「えへへ~♪」
「ほんとモモコ、身の程知りなさいよ!この白豚~♪」
「え、あ、うん…」
「よーし、じゃあ作戦はこうよ!今思いついたんだけど、まず私がすッごい美人に変身して、その色香でたくやくんを誘惑してベッドイン、その後薬を飲ませて彼を眠らせ、眠っている間にあたいとモモコが入れ替わる。そんで目を覚ました彼に一晩過ごした責任を取って付き合わせるって作戦よ!」
「えぇー!!なんでそんな卑劣な作戦この短時間で思いつくの!?しかもあんた、ちゃっかりたくやくんと寝ることになってんじゃない!!この淫乱!」
「あたいじゃなくてあたいが変身したホリー・ハンターが、よ」
「おんなじだよ!!」
「役得よ!!」
「コラッ!!しかもホリー・ハンターになるつもりだったの!?微妙じゃない!?」
「ウソッ!?どうしよう、もう他に誰も思いつかないわ!!」
「レパートリー少ないね!!」
「いやぁさ、あたいね、名前の頭文字が“ホ”の人にしかなれないんだわ…トホホ」
「トホホ!?トホホじゃなくね!?」
「じゃあ何ホホなのよ!!」
「ホから離れてよ!!」
「だーいじょーぶ、案外頭文字が“ホ”の人ってたくさんいるんだから!!ホルマジオとか…」
「……ジョジョの“リトル・フィート”の人!?第五部の!?一瞬本気で悩んじゃったじゃない!!誰が気付くかっつの!!」
「悩んでてもしょうがない!!とりあえずこっそり彼に近づきましょ!!」
「う、うん…釈然としないけどそうね…」
「ジョジョ歩きで!!」
「どんな歩き方!?しかも気付かれるんじゃない!?」
「オッポナ!!行くわよ!!」
「え!?ホッコちゃんの人語を操る飼い猫オッポナ!?いつの間に!?」
「こんなこともあろうかと連れて来ておいたのよ」
「ニギャァ―――――!!!!」
「鳴き声コワッ!!」

~つづく~

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