お前にホの字・2(中編)

○続・ひみつのホッコちゃん

かくかくしかじかでモモコの憧れ、既無羅侘苦夜(武士の一分)の半径五メートル以内に近づいたホッコちゃんとモモコとホッコちゃんの人語を操る飼い猫、オッポナ!さて、二人と一匹はこれからどうする!?

「よし、やっとスタンドの射程圏内に入ったわ!」
「何の!?」
「ヤツの懐まで一っ飛びニャース!ニギャー!!」
「オッポナ!殺すつもりなの!?それからニャースって!!」
「ちょっとキャラ設定があやふやだからこの子も色々と探り探りなの」
「そうだニャン。ニギャー!!」
「いちいちハイテンションで鳴かない!!あぁ、それにしてもたくやくん、やっぱり近くで見てもカッコいいわぁ…」
「ほんとそうね、むしゃぶりつきたいくらいだわさ、尻に」
「尻に!?」
「ヤツの尻までも一っ飛びニャンギラス!」
「ニャンギラス!?そんなことよりホッコちゃん、結局どうすんのさ?」
「ふふん、すごいのを考えたわよ。まずあたいがスカウトマンに扮してたくやくんをスカウト、そして早速映画の撮影に移行して、ヒロイン役にあんたを大抜擢してやるってわけよ!!そうなっちまえばこっちのもの、キスシーンも濡れ場も思いのままよ!!」
「スゴイ!!なんか作戦らしい作戦だ!本当にありがとう、ホッコちゃん!」
「いいのよ、成功の暁にはモモコにたくさん包んでもらえるんだから、頑張んなきゃ!」
「え?あ、うん…」
「さすがご主人様でヤンス!!」
「ヤンス!?」
「でしょう?約六分間も頭をフル回転させたから疲れちゃった」
「でもホッコちゃん、ホッコちゃんは実在の人でしかも名前の頭文字が“ホ”の人にしかなれないんでしょ?大丈夫なの?」
「大丈夫よ!!その辺りもちゃんと考えてるから!!じゃあ早速変身だ!」
「そう来なくちゃでヤン・デ・ボン!!」
「お前ちょっと黙ってろ!!」
「じゃいくわよ…ホク、ホキュ、ホクミャ、マキュヤマピン、ヤマキョン、ポ、ホクミャキュ…リャ、リャ、ラ、リャマピョン、ホリプロの人になーれ!!」
「呪文カミカミな上に変身する人の範囲の設定が広い!!」

(ボワワーン)

「やったー、ホリプロスカウト部の堀口利絵さんになったー!」
「わー、アットランダムに誰かになったー!!」
「ニギャー!!74年入社の大ベテランだ…ラス!」
「無理に語尾を変えるな、この化け猫め!」
「じゃあ早速行って来るわいな!」

―五分後―

「ど、どうだった!?」
「バッチリよ!奴さん、始めは乗り気じゃなかったくせに、ギャラのゼロを一個足して、しかも芸能人はモテモテだって言ったらすぐさま食いついたわよ!」
「やめて!好きな人の黒い部分を見せないで!」
「人間はこれだから嫌なんだ…ニャン」
「五分で大幅なキャラ変わりしないで!なにその世をひねたキャラは!」
「よーし、今日中にクランクインするわよ!早く準備して!」
「えー、今日!?心の準備が…」
「うるせー、駄馬!!このメス穴が!!」
「え…」
「これがご主人様の本性ニャンパレード!」
「うーん、とりあえずこの場はオッポナに賛成!」
「撮影やら何やらはあたいが何となく色んな人に変身してこなすわ」
「何となくって、大丈夫なの?」
「うん。とりあえず監督はポール・トーマス・アンダーソンよ。“ポ”ならギリでいけるわ。そして脚本はかの有名な『ハムレット』で行くわよ!あんたがオフィーリアね」
「やったぁ!私がオフィーリア…って、オフィーリアはフラれるし死ぬよね?しかも発狂して…」
「いいのよ、別に。大事なとこは演じさせてあげるから」
「はぁ…他の役は?」
「とりあえずガートルードはあたいがホリー・ハンターに扮して演じるとして、他の役はそうね、あんたの弟のカン平をホレイショにでも抜擢してやりますか」
「それでも全然足りないけど…」
「うるさい女ね…そうだわ、准将と軍曹の兄弟に頼みましょう!」
「准将ってあのガキ大将でドSの?軍曹は子供をかみ殺したっていういわく付きの巨大な犬に乗ってるハナタレ小僧よね?危険じゃない?」
「だーいじょーぶ、金さえ積めば!」
「そのお金は…」
「もちろんお前もちだパン!」
「オッポナ!?」
「とりあえずまたホリプロの人になってスカウトしてみるっていう手もあるわ!」
「そうね、まずはそれでいきましょ!」
「じゃあ変身よ!ホキュ、ホクシンイットウリュウ、じゃなくてホクミャ、ホクバクカイシデベトナムセンソウ、グンバツセイジ、ホルマリンヅケホリベケイスケ、オイドン、バーイ!!ホリプロの人になりたいな!!」
「さっきから気になってるんだけど呪文がメチャメチャじゃない!?」
「呪文がメチャメチャでも気持ちの持ちようで変身できるニャロメ!!」
「あ、そうなんだ、へぇ…」

(ボワワーン)

「なったー!ホリプロ営業部の洞口正太郎さんに!」
「スカウトマンじゃなくね!?」

~つづく~

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