どうも、須貝です。大変お久しぶりですね。昨年は三回しか更新しませんでしたが、今年は二回だけになりそう。すみません。でも今の自分のペースで進めていこうと思います。
二月にmonophonic orchestraの休止を発表して、それから今まで何をやっていたかを簡単に。
三月は「せりふを読んでみよう」というワークショップに参加したり、『浮遊』という作品をやってみようというワークショップをやってみたりしてました。『夜を読む』というリーディングイベントもやりましたね。これは大石くんと二人で公の場に出るのがしばらく見納めですよという会でした。
四月はテーブルジョークの皆と静岡旅行に行ったり、『浮遊』ワークショップの第二部をやったりしてました。『浮遊』ワークショップはまたやりたいですね。とても実り多い企画でした。
五月は□字ックさんの短編公演に参加し、山田佳奈と亀島一徳の二人芝居、『カラオケの夜』という作品を脚本・演出させていただきました。これも非常に楽しかったです。短い稽古時間でしたが、三十分という時間にやりたいことの全てを詰め込ませていただきました。二人とのやり取りも楽しかったなぁ。
さらに五月は後述する高校生と創る演劇のオーディションで豊橋へ。さらに通年ワークショップ第三期の稽古も本格的にスタート。なんだかんだで忙しく過ごさせていただきました。
六月は通年ワークショップ第三期の発表公演、Mo’xtra produce『ハイハイツ、タワーリングレジデンス』という作品の脚本・演出・構成をやりました。オムニバス公演。ずっとやってみたかった形式でやりました。いい意味で課題の残る公演でした。通年ワークショップですが、次回はいつやるかまだ未定です。お待たせしてしまってる方がいたら申し訳ありません。今後どういう形でやるかちゃんと考えてから再開したいなと思ってます。
七月は『カラオケの夜』映画化の計画が持ち上がり、再び山田と亀ちゃんとタッグを組んで制作に取り掛かった時期で、主に脚本を直してました。山田組の皆さん、特に耳井さんには大変感謝です。また頼もしい同い年と知り合えて嬉しかったです。書き直された脚本はほぼ最強の仕上がりになりました。
八月は『カラオケの夜』のリハーサルと怒涛の撮影、△プロデュース『そして誰もいなくなった』の稽古開始、高校生と創る演劇のキャスト・スタッフとの四日間のワークショップと、あまり記憶がないので忙しかったんだろうと思います。同時に来年の企画の打ち合わせが三つほどスタートしたので、これらは追ってお知らせいたします。
九月は『そして誰もいなくなった』の本番。海外ミステリーはやっぱりいいですね。またやりたいです。グリーンマーダーケースも早く再演したい。そして二十四日に高校生と創る演劇の稽古開始。長い長い豊橋ライフのスタートです。
十月はひたすら稽古でした。その間に来年一月にある企画の脚本を書いたりしてましたが、基本的には毎晩稽古が終わったら演出チームで集まってああでもないこうでもない、あの子はこうしようこの子はこうしようと議論を重ねた毎日でした。意外と時間がなかったなぁ。東京に日帰りして宮下雄也さんのオールナイトイベントに出演したりしました。キツかったけど楽しかった。豊橋にトンボ帰りだったなぁ。
そして十一月。高校生と創る演劇『滅びの子らに星の祈りを』の本番。大変貴重な経験をさせていただきました。千秋楽後の皆の顔が忘れられません。舞台裏が地獄のように泣き顔だらけで(笑)。なかなか帰らない泣き虫ゾンビたちも面白かった。一生忘れない経験をさせていただきました。
全ての公演やワークショップ、ご来場いただいたり応援してくださったりした皆様、本当にありがとうございました。お礼が遅くなってしまってすみません。皆さんの存在に心から助けていただきました。
実は、公に言うつもりはなかったのですが、是非他の皆さんの認知と予防のために。実は九月の頭に手術して、精巣腫瘍を摘出しました。なので今、左の精巣がありません。爆笑問題の田中さんと同じ病気ですね。
幸い僕の場合は最も良性のパターンで、現状転移が認められないので経過観察となっております。それでも二年間三ヶ月置きに精密検査をしなければならないので、おっかない病気なんですね。かなり珍しい病気みたいです。
二月に精巣にしこりを感じて病院に行ったのですが、最初の病院では癌じゃないよーと言われ、抗生物質だけ出してもらったんですが、豊橋に行く前に不安要素を取り除いておこうと、結局治っていなかったので、八月に別の病院に行った所、すぐに大学病院に行きなさいと言われて大学病院へ行って精密検査、一週間後に入院して手術という流れになりました。昔だったら即日入院で緊急手術だったらしいです。
僕の場合はCTの結果転移してないっぽい、というのと、精巣がんはとにかく転移が早く、一ヶ月放置すると全身に転移するので(主に肺がんとリンパ節がんになります)、今転移してないということは悪性じゃなく多分良性、という理由で即日入院ではなかったのですが(あとは技術の進歩とかもあるっぽい)、どっちにしろ放置するとマズいのでできるだけ早く手術してください、とのことで。
これらの一連の内容は結構さらっと告知されたのですが、家に帰って妻に報告しながら思ったのは、ということは、もし悪性だったら半年放置した段階でかなりアウトだったんだなぁと、死んでいたかもしれないんだなぁということで。
手術は無事終わりまして、麻酔がなぜか効かなかったり同室の方のイビキに悩まされたりなんてことはありましたけど、素晴らしい医師、看護師の方々のおかげで経過は良好です。傷もすっかりふさがりました。杏林大学病院の皆さん、本当にありがとう。美人とイケメンがとにかく多い病院です。二つ目に行って、大学病院への紹介状を書いてくれた国沢泌尿器皮フ科さん、本当にありがとう。あなたのおかげで助かりました。一つ目に行った病院は一応名誉のために名前は伏せますが、気になる方には名前をお教えします。とんでもねぇヤブです。死にかけたぜ、こちとら。
主に男性の皆さん、精巣がんは遺伝的なものらしいですが、僕の家系には思い当たる限り同じ病気の人がいないので、突発的に発症する可能性が高い病気なのかもしれません。特に原因もありません。なので、お風呂に入る時とかこまめに触診してください。そして異常を認めたらすぐに、恥ずかしがらずに病院に行ってください。大丈夫です、向こうは見慣れてますから。毎日何本も見てますから、気にせず行ってください。命の方が大事です。
それから、どれだけ信頼している医院だろうが、口コミが優れていようが、絶対にセカンドオピニオンを求めてください。サードオピニオンまで採ってもいいと思いました。どんな名医にも誤診はありますし、その時の患者の状態で診断を誤ることもあります。
『そして誰もいなくなった』の本番中は傷の痛みと戦い、豊橋に行っても気圧の状態で痛みがひどい時があって、正直しんどかったこともありました。家を離れて一人で過ごしていたためにひどいうつ状態になったり、今日稽古行けないかも…と直前までうだうだしていたりしていたこともありました。それでも毎日稽古場に向かえたのは、キラッキラした目で僕を待っている高校生たちがいたからです。本当にありがとう。君たちに僕はすごく救われていたんだよ。僕の命を繋いでくれてありがとう。後は奥さんが毎日面白動画を送ってくれたからかな。本当にありがとう。演出助手のあやちゃん、レベちゃんにも本当に助けられました。今度女子会しましょ。
△プロデュースの皆さんには稽古に行けずご迷惑お掛けしたし、『滅びの子らに〜』の脚本も当初の予定より一ヶ月近く遅れてしまって、PLATの皆さんにも大変ご迷惑をお掛けしました。家族や妻やごく少数の友人にも心配を掛けました。なんとか生きてます。
そういう日々の中でずっと考えていたのは、生きることと死ぬことについてでした。もっと大病を経験した人には笑われてしまうんでしょうが、僕にとっては大問題でした。死んでいたかもしれなかった自分がいて、生き永らえて、これから先何をしたらいいんだろうということでした。やりたくないことはしないようにしようと思いました。全ての仕事が最高、とはいかないのかもしれないけど、ちゃんと損せず、自分のやりたいことだけ選び取っていくのも才能で技術だと思ったので、適度に楽して図太く生きようと思いました。明日死ぬかもしれないしなぁと毎日思っていたし、五分後ぽっくり逝くかもとも思っていました。
『1万円の使いみち』で地面を失った人たちを書いた時の僕は地面を失ってしまっていて、どう生きていいか分からなかった。『滅びの子らに星の祈りを』を書き終わった時、はっきり言って未熟な脚本だが、僕はこの作品で全ての存在を愛したいと思いました。誰も彼もの存在を認めたかった。あらゆる人を抱き締めたかった。気持ち悪くない程度にね。稽古は本当に楽しく、プレシャスな時間の連続でした。毎日変わっていく彼らを見ていて、今ここで僕が死んでも、この子たちがいるから大丈夫だと思いました。人間の歴史の中で生きていくって、そういうことなんだと思いました。火山小桜ちゃんという役がいて、彼女が最後に語る内容に、毎ステージ涙を流していました。さくちゃん、サンクス。
「今までたくさんの人間が生まれては死んでいったけど、今まで一人も同じ人間はいなかった。皆でちょっとずつ積み上げてるの。より良い方向に進むように。皆でちょっとずつ。だから私たちは後戻りしてなくて、だから私たちは前に進み続けていて、だから、私たちは、ユリイカ!」
愛するということを考えて、愛するということは許すことであり、受け入れることであり、対話することであり、理解することであり、理解してもらうことであり、傷付け合うことであり、叱ることであり、人間と人間の間に生まれる謎の物質であり、あるいはダークマターのような、相互作用はあるのに形にはならない、僕らを引き合わせる力であり、突き放す力であり、また引き合わせる力であり、朝起きて朝日を浴びることであり、風の匂いを嗅ぐことであり、海に足を浸すことであり、あなたの手の温もり、髪の毛の揺れるその瞬間であり、生きていることであり、夜空に浮かぶ星であり、忘れ去らないことであり、確実に残していくことであり、受け継いでいくことであり、この世にはクソみたいな悲劇があふれていて、それでも毎日奇跡は起きていて、そんな世界を嫌うこともできずただ寄り添うしかなく、そういう私たちのどうしようもない、何万年も続いてきたことの延長線上にあることであり、私たち人間が人間であって良かったと思う瞬間なのかもしれない。そんなことを秋の夜長に思います。
皆様、そんなこんなで、多謝。ただただ多謝です。今後ともよろしくお願いいたします。