芝居小屋に蜘蛛一匹の憂鬱。


どうも、須貝です。

本日、阿佐ヶ谷にありますザムザ阿佐ヶ谷という、もうだいぶ古い劇場へお芝居を観に行って参りました。

この劇場とにかく雰囲気がある所なのですが、場内は板張りでちょっと見ると昔ながらの芝居小屋といった感じ、明治頃の道楽人がどこぞの旅館の主人にでもなっていたとしたら、こんな劇場を敷地内におっ建てるかもしれません。

この劇場は幽霊が多く出ることでも有名なんですが、とにかくそこにお芝居を観に行って参りました。

それで、客席に座って落ち着いて暫く、開演までの時間を待っていた時のこと。ふと頭上を見上げると、客席上方の二階席の様相を呈している部分(普段ここは照明や音響の操作ブースとなっております)の下手側の手摺りから、一匹の蜘蛛が垂れ下がっています。

最初は何か埃のようなものが舞っているのかと思いましたが、中空に留まっている様子。目を凝らすとやはり蜘蛛だったわけですが、柔らかな照明に照らされて、黄金色に輝いているのでした。

僕は虫全般が苦手なんですが(特にゴキブリさん)、なぜか蜘蛛は平気なのです。どことなく親近感を覚えるというか、そのフォルムも嫌いではありません。

芥川さんの小説、「蜘蛛の糸」でお釈迦様が地獄に糸を垂らしていますが、確かに空から蜘蛛が垂れ下がっている様子は天上を思わせたのかもしれませんね。

この蜘蛛、もしかしたらこの劇場の主なのかもしれません。今日もお芝居を特等席で観ていたんだったりして。

お芝居を観ながらそんなことを頭の片隅で考えていたのですが、ふと確認してみるともういなくなっていました。

生まれ変わったら劇場に住む蜘蛛になりたいな。…いや、疲れそうだぜ。

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