つまらぬこと。

どうも、須貝です。

最近よく、子供が注意される場面、または自分が注意せねばならない状況に出会うのですが、注意された後、ほぼ九割近い親が同じ言葉を発するのに気付きました。

誰かが、もしくは自分がはしゃぎまわっている子供に注意をすると、決まって彼らの親たちは、「怒られるからやめなさい」と言うのです。

「ほら、おばさんに怒られるでしょ?もうやめなさい」
「お兄さんに怒られちゃったじゃないの。もうやめなさい」

僕らが子供たちに注意をするのは、例えば混み合った店内などで棚の角や鏡やガラスなどにぶつかると危ないから走り回るなという意味であり、公共の場で騒ぐのは恥ずかしいし社会性に乏しいことだから静かにしなさいという意味であって、なにも悪意があるわけではないしもちろん怒りたいから怒っているわけでもありません。ちゃんと正当な理由があるのです。

「怒られるから」やめなければならないのか。では、と逆に問いたくなるのですが、あなた方は怒られなければ自分の子供が走り回るままに、暴れ回るままにさせておいたというのでしょうか。怒られなければ自分は知らん顔で放って置いたというのでしょうか。子供が角に頭をぶつけて怪我をしたり、ぶら下がった棚の下敷きになったりするのではという心配は、僕らが注意するまで微塵も生まれなかったというのでしょうか。将来子供が人前でも平気で騒ぐ大人に、そのせいで信用を失うような大人になっても一向に構わないというのでしょうか。

さらに言わせてもらえれば、なぜあなた方より他人の僕たちの方が先に注意をしたのでしょうか。あなた方の子供に一番注意をしやすい立場にある人間は、あなたたちをおいて他にはいないではないですか。

「怒られるからやめなさい」と言う九割の親のさらに約七割が、注意してくれた人に対して謝罪もお礼もしません。黙って買い物に戻ったり、何事もなかったかのように奥様同士のおしゃべりを再開します。もちろんこっちはそんなもの求めちゃあいませんが、普通の神経を持ち合わせていれば、「あぁ、迷惑を掛けてしまった、注意させてしまった」と思ったり、「本来は自分が言うべきだったのに、申し訳ない」と思ったりして謝罪なりお礼なりするものなのではないでしょうか。恥ずかしくないのでしょうか。

もっと悪いのは、子供たちに怒られた理由を説明しないことです。「危ないから」、「恥ずかしいことだから」といった一言だけでも、せめて、添えてくれればいいのに。これではまた同じことを繰り返すだけじゃないですか。

思い返してみれば、記憶違いはあるかもしれませんが、僕は両親と一緒にいる場で他の大人に怒られた記憶がありません。そして僕の両親は怒った理由もちゃんと説明してくれました。きちんと怒られた後はたまらなく恥ずかしくなったものでした。もう二度とすまいと思ったものでした。これは自慢ですが、とても当然のことのように思います。

これら一事だけを取って、「怒られるからやめなさい」という親たちに子供への愛情が全くないなどとなじるつもりはありません。他の場面のことは僕には知りようがありませんし。「怒られるからやめなさい」と言ってしまう気持ちも分かりますからね。

しかし、「怒られるからやめなさい」という叱り方に愛がないのだけは確かです。これは確かです。叱ってすらいません。ただの事実の確認です。なぜダメなのか、なぜ怒られたのか、しっかり分かるまで何度も、親たちが言い続けなければならないのです。それなくして何が愛かと馬鹿馬鹿しくなります。

僕には子供がいません。結婚してすらいません。実際に家庭を持ち、子供を育てる方がこれを読んだら、「何を何も知らない若造が偉そうに」と憤慨なさるかもしれません。確かにその通りです。

しかし、逆に言わせていただきます。ならば、あなた方が自分を誇る立派な親だと言うのであれば、子供もいない、家庭も持たないただの穀潰しの若造の役者なんぞに、なめられるようなことをしないで下さいよ。これだけは本当にお願いします。そうでなければ、勝手なお願いですが、誰かと結婚して家庭を持ち、子供を育てるということに一片の希望も抱けなくなるじゃないですか。

思うままに書きまして、すみません。

こういったずれと言いますか、何かが狂っていっているような出来事に触れる度、自分の、または皆で連綿と培ってきたものが砂を被って消えていくような、悲しい気持ちになります。
そしてその度に、「あぁ、つまらない世の中になったなぁ」と、嘆きとも絶望とも付かないため息が、どうしようもなく出るのです。

しかし、つまらないつまらないと言ってばかりもいられません。つまらぬことを面白くするのが僕らの仕事ですから。自分で考えている以上にもっと頑張って面白くしていかないと、世の中は加速度的につまらなくなっていっているのだという認識を得られただけ、良いことだとも思います。

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