極めて短編集(10)


○おやすみとおはようの間

 早稲田からの始発、都電荒川線は今日は混んでいて、いつもなら座れるガラガラの席が全て埋まっている。

 そうか、今日は祝日だったけ。どおりで皆幸せそうな顔してらぁ。

 あの頃、あの人からのメールが「おやすみ」で終わって、僕が再び「おはよう」で始めるその間、おやすみとおはようの間には神聖なまどろみがあって、誰にも侵すことが出来なかった。

 あの頃、僕のおやすみとおはようの間にあった感情には、この車内の全ての幸せが集っても、敵わない。

 新目白通りに沿って、日付変更線を横切る。
 一日がようやく始まる。

~おわり~

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