三文セリフ集1

そろそろようやく十一月らしい肌寒さになってきそうですね。寒さには滅法弱い、北国生まれの須貝です。

さて、皆さんの身の回りに溢れているもの、どんなものがあるでしょうか。コンビニ、その日暮しの若者たち、ムカつく中学生、目にはするけど手には出来ないお金、窒素、酸素、二酸化炭素。そうですね、そんなものももちろんあります。

しかし、それ以上にこの世にはびこるものがあります。そう、それは三文セリフ。ここではそんな素敵な三文セリフたちをご紹介いたしましょう。

1.「まさかお前、目が…!」

・主人公の友達的な位置にある実直で正義感の強い脇役が、闘いの最中にそんな様子も見せずに健気に闘う。そして目が…というパターン。原因は敵の極悪非道な攻撃だったり、しばしば持病のせいであったりする。

・皆さんの記憶にあるであろうキャラとしては、聖闘士星也のドラゴン紫龍なんかが挙げられるだろうが、彼は三回くらい視力を失ったり回復したり、結局また取り戻したりしている。

・これが視力や聴力ならまだ悲劇性は高いのだが、嗅覚とかだと一気に悲劇性は落ちる。
「まさかお前、鼻が…!」とか言われても、バトルの最中であれば影響しない可能性大である。ちなみにザ・シェフという料理マンガでは、女性ソムリエが生理のために味覚が狂うという話があったが、これも悲劇性といえば悲劇性だろう。

使用例)
「おい、見たかよ、今のシュート!すごかったぜ~!」
「あ、ごめん、見てなかった」
「まさかお前、目が…」

2.「…よくも騙したわね!」

・言っておくが、騙された人間はなかなかこんなことを咄嗟に言わないと思う。昼ドラなどでは定番のセリフである。

・これに続くセリフとしては、「泥棒猫!」、や「女狐!」のような女々しいものが続くことが多い。

・展開としては、視聴者、および読者は、このセリフの発言者に対して同情を覚えることはほとんどなく、「お前なら当然じゃ」と思うことのほうがパターンとしては多いようである。

・しかし一方、岩明均氏のマンガ、ヒストリエにおいて、蛮族の子でありながら身分ある人に引き取られて育った主人公がその家を去る時、家の者たち全員に向かって、「よくも騙したなぁ!」と叫ぶシーンは、胸に迫るものがあった。要は使い方なのだろうと思う。

使用例)
「よくも騙したわね!」
「…え?僕、ですか?」
「そうよ、あんたよ、このすっとこどっこい!」
「すっとこどっこい…」
「お茶の一杯でもおごったらどうなの?私に気があるならさぁ!」
「は、はぁ…」

3.「ねぇ知ってる?美樹の彼ってさ、東大出のエリートで、お父さんが社長の超お金持ちなんだって!」

・こういったセリフは大抵噂好きの同僚が発するものだが、その同僚は恋はしたいが男に恵まれないと嘆き、「この前の彼はどうしたのよ?」、「もう別れちゃったわ、だってデートにジャージで来るんだもん」とかいう会話の後者を担当することが圧倒的に多い。

・このセリフに出てくる美樹が主人公だった場合、彼氏は家柄や学歴重視というちょっと嫌な女的キャリアウーマンだが、最終的には紆余曲折あって冴えない準主役的男とくっつくという黄金パターンが用意されている。

・また美樹がチョイ役だった場合、主人公は口先ではその在り方を否定しているが、本心ではうらやましく思っており、自分にちょっと言い寄ってくる家柄、学歴、ルックスが揃っていい男には割りと簡単になびくのである。しかしそのいい男を実は美樹が狙っていたりして小競り合い、または美樹がその男と元恋人の関係で、男はまだ美樹に未練があり、美樹は主人公への嫌がらせ目的で再び男に言い寄ったりする。またまた紆余曲折があるが、結局主人公は冴えない準主役的男とくっつくのである。(そしてモテ男と冴えない男は同僚だったりする)

使用例)

「ねぇ知ってる?美樹の彼ってさ、東大出のエリートで、お父さんが社長の超お金持ちなんだって!」
「クックックック…」
「な、何がおかしいの?」
「私がその美樹の彼氏だよ!」

4.「俺、余命三ヶ月なんだって。フフ、笑っちゃうよな…」

・よくドラマとかで医者が「余命三ヶ月」といった表現を使っているが、実際にそんな言い方をされたらかなり腹が立つだろう。もし実際にそうだったら傷付くだろうなぁ。僕はついぞ余命の宣告をされたことがないので分からないが。

・大体このパターンだとピッチャーだったりエースストライカーだったりすることが多いのだが、往年の名作、「シュート!」では、若き天才久保嘉晴が白血病に冒されながらも伝説のゴール・トゥ・ゴールを達成、ピッチ上で倒れ、そのまま帰らぬ人となるという衝撃の展開がマンガ界を騒がせた。

・その久保さん、「死にたくねぇよ…」、「トシ、サッカー好きか?」、「ボールを持ったら観客全員が自分を見ていると思え」などの名言を残しまくり、掛川イレブンを死後も引っ張っていったと言っても過言ではないのである。

使用例)

「俺、余命三ヶ月なんだって。フフ、笑っちゃうよな…」
「マジッ?ウフフ、アハハ、ヒヤーハッハッハッハ、ウヒー!!」

…とまぁこんなノリでまたやります。

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