お前にホの字~ああしたりこうしたり~

『ホラえもん』

「ホラえもーん!」

バタバタと階段を駆け上がり、一気に部屋に飛び込んでくるホビ太。

「どうしたんだいホビ太くん、ちょっと間違えると某大作映画の指輪を捨てに行く主人公の部族の名前みたいになるホビ太くん」

「誰に説明してるんだよ!そっちだって捕まって保釈されたけど懲りずに熱愛報道されたIT長者みたいな名前じゃないか!フェーン!フェーン!」

「さておき、またホイアンと骨夫にやられたのかい?」

「うん、バカラ賭博で四十万近くスッちまったんだよ~!」

「だからバカラはやめとけっていったのに!これで今月だけでもう二百万近くスッてるじゃないか!どうすんだい、カード破産したら!」

「もう一歩手前だよ!フェーン!エルニーニョ!」

「バイトしたら?」

「だってまだ僕、小学生なんだぜ?どのコンビ二も雇ってくれないし、新聞配達はやってるけど、全然間に合わないよ!」

「なら勝負しなきゃいいのに」

「無理矢理やらされるんだよ!今までの一千万近い負債は、一発当てない限り到底返せないって言われてさ。奴らの賭博は全部下限が1000$なんだよ!ホイアンは怖いし、骨夫は骨張ってて気持ち悪いし…」

「なにカイジみたいな状況になってんのさ、アホらしい。一発当てりゃいいじゃん」

「それが勝てないんだよ!奴ら絶対何かやってるんだよ!見破ってやる!」

「そりゃ無理だよ、だって僕の道具は未来の……うん、頑張ってね!」

「ホラえもん!?今、『僕の道具は』って言ったよね!?何か貸してるの?ねぇ、ホラえもんの道具で奴らはイカサマしてるの?ねぇ!」

「な、何も貸してないよ、ただ自分の所にバレないようにカードを二枚ずつ配るテクニックを教えてあげただけで…」

「なにアホこいてんだよ!そんな丸っこい手でカードテクも何もないだろ!?何貸したんだよ!言えよ、言うまで部屋から出さないぞ!」

「うるせーな!仕方ないだろ!?道具を出さなきゃガールフレンドのミーちゃんをチェンマイの売春宿に沈めるって脅されたんだからさ!香港マフィアと通じてるホイアンに逆らえるわけないだろ!?骨夫は骨張ってて気持ち悪いしさ…」

「ミーちゃんって六本木のキャバ嬢の?まだ切れてなかったのかよ、チェッ!どうせ裏でホイアンと通じてるに決まってらぁ(吐き捨てるように)!」

「そんなことあるわけないだろ!?ミーちゃんはあんなに優しくって、毎日メールもくれるんだから!」

「営業メールだよ、このタコ!いいからさっさと道具出せよ!」

「チッ、さんざ言い腐ってよ、どうなっても知らねーぜ?第一君が勝ったらどうせ道具のせいだってすぐばれちまうんだから」

「誰が奴らに勝つ道具を出してくれって言ったよ、殺す道具だよ!」

「バ、バカな、未来は平和だからそんな秘密道具なんてないんだから!」

「あーらら、お得意のホラが出ましたよ、今までの君の道具なんか、ほとんど立派に殺傷能力があるじゃないか!スモールライトは小さくして踏み潰せばいいし、どこでもドアはお風呂場のドアと取り替えて北極に連れて行けばいいし、タケコプターは途中でバッテリーが切れるようにしとけばいいし、タイム風呂敷は胎児の状態にまで戻せるし、ビッグライトで胃の内容物だけ大きくしたり、お取り寄せバッグで奴らの腎臓を取り寄せたり…。ホラ!」

「ホラ、じゃないよ!全部君のアイディア次第じゃないか!しかもなんだよ、ビッグライトの使い方!想像したら相当気持ち悪いじゃないか!」

「何キレイごと抜かしてんのさ、どうせそうやって未来は滅ぶんだろ?どうせほんとはアキラみたいな未来になるんだろ!?僕だってどうせ憧れのほずかちゃんとは結ばれないんだろ?夫婦の営みもできないんだろ!?」

「小学生のクセに夫婦の営みとか言うなよ!」

「素人の女と営みてーんだよ!」

「えっ!?素人童貞!?なにいっちょまえに遊んでんだよ!分かったよ、貸せばいいんだろ…」

「分かりゃいいんだよ、このタゴサクがぁ!青いくせにいきがってんじゃねーよ!ぺッ!」

「チキショー、すごい罵詈雑言だ…ロボット三原則を知らないな?まぁいいや、(パッパカパッパパーンパーンパーン)、独裁者スイッ…」

「前に出したろーが!本当は死なないんだろ?そんな子供だましいるかよ!」

「いや、前のはお試し版で、これが正規品だよ。ただし、名前の頭文字が“ホ”の人しか消せないんだ」

「なんだよ、おあつりゃ、おあつ、おあつりぇ、…うってつけじゃん!」

「お誂えだろ!かむなら無理すんなよ!」

「ホイアン、骨夫、消えろ!(ポチッ)」

(ビシュン!)

「なんだ、今の音!?」

「ホビ太くん、どうやら奴さんたち、家の前にいたみたいだぜ!」

「なんだよ、取り立てに来てたのかよ!間一髪だぜ!よぉし、この勢いで…香港マフィア、消えろ!(ポチッ)」

(ビシュン!)

「総称だろ!?映画に出てくるような本当は悪くない人とかいたらどうすんだよ!」

「ホイット・ニーヒューストン、消えろ!(ポチッ)」

(ビシュン!)

「おいっ!何消してんだよ!腐っても有名なシンガーだぞ!ケビン・コスナーと共演もしてるんだぞ!しかも切る場所間違ってるから!ホイットニーだから!」

「細野晴臣、消えろ!(ポチッ)」

(ビシュン!)

「こらっ!YMOが再結成できなくなっちゃうだろ!?」

「細野さんのお祖父さんはタイタニックに日本人で唯一乗って、生還してるんだよね」

「へぇ~、そうなんだぁ」

「その勢いで堀部圭亮、消えろ!(ポチッ)」

(ビシュン!)

「デイッ!どんな勢いだよ!K2も再結成できなくなるだろ!?」

「細木数子、消えろ!(ポチッ)」

(ビシュン!)

「おっ…あ、まぁそれはいいか。放っておけばいずれ消えるしね」

「ほずかちゃん、消えろ!(ポチッ)」

(ビシュン!)

「バーッ!なに消してんだよ!お前の思い人だろーが!」

「どうせ俺のものにならないなら、この世にいようがいまいが同じさ…」

「何だよ、そのハタ迷惑な独占欲は!…でも一理あるな…」

「だろ?真理だろ?よかったら貸すぜ?」

「でもミーちゃんは頭文字「ホ」じゃないしな…」

「じゃあとりあえず、ほしのあき、消しとくか?」

「うん…(ポチッ)」
< br />(ビシュン!)

…完。色んな人、すいません。

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