ちいさきもの。

街を抜けると子供たちに行き会う。
ここは彼らの世界だ。
彼らはいつだってとびきり不自由な、
とびきりの好き勝手を抱えて生きている。
ちいさきもの、ちいさきものと心の中で呟いて、
後に続ける言葉を探る。
ちいさきものよ、あなたは美しい。
この世界のあらゆる全ては、
あなたのために用意され、
あなたに見つけられるのを待ち受けている。
かわいそうになるくらいだ。
あなたの登場を心待ちにしている。

暗い部屋に一人こもって、
サイリウムを折り曲げてピンク色の光を放つ。
光源を探して。光源を巡って。
こんなに薄汚い人間はいないのだと思い始めて、
またいつものように美しいものに思いを馳せる。
幻想や理想を抱いている訳じゃない。
あなたは美しい。
あなたは美しい。

これから君たちが生きていく度に、
一つずつ何かが奪われていくのを、
僕らにはどうすることもできない。
だからそれと同じ分だけ与えることを考える。
君たちは同じ分だけ僕らから奪えばいい。

街を抜けると君たちに行き会う。
無垢な目がこちらに置かれている。
その美しさに当てられて目眩がする。
僕のなくしてきたものや落としてきたもの、
歩いてきた道のことを思う。
それがどこかで君たちに繋がっていくのだろうかと考えると、
君たちが他人には思えない。
誰に対しても同じように思うわけじゃない。
特に君たちに対して思うんだ。

ちいさきもの。

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