カスガイ 2nd connect 『バイト』、終演致しました。

どうも、須貝です。大変ご無沙汰してしまい、申し訳ありません。

カスガイ2nd connect『バイト』、東京・大阪計21ステージ終了致しました。約3週間の本番期間と約2ヶ月の稽古期間という濃密な時間を全うして今、少し落ち着くというよりは腑抜けてしまっております。普段は本番後、わりとすぐリスタート出来る方なのですが、そのくらい濃かったのだなと、生活の大部分になっていたのだなと痛感しています。

今振り返ってここに書けることというのが、実はほぼありません。

どういうことかと言えば、稽古期間にどういうことをしたか、どういうことを考えたか、ということだけでなく、僕が役者としてやって来たこの10年間ほどの期間や29年生きてきたことまで全て含め、落とし尽くせる限りの全てを、全てのステージに余す所なく置いて来たという実感があるからです。だから今更ここでもう一度書くことが、一つもありません。本当は常にそうあるべきで、最近は舞台に恵まれてそう思えることが多くなっているのですが、今回は特に、そう感じました。

観て頂けた方にとってはだから重複となるかもしれませんが、観て頂けなかった方のために少しだけ、書きます。観て頂けた方のためにも少しだけ。

今回は芝居の作り方からしてそもそも、毎ステージ同じ戯曲に臨みながら違うことが起きるという舞台だったので、稽古場で生まれたことや考えたこと、家だったり移動中だったり稽古場にいない時間に考えたこと、さらには本番中に考えたことや思いついたこと、そういった全てのことがあらゆるステージのあらゆる瞬間に生きて、普段であれば取捨選択する諸々をいちいち全て利用することが出来たという稀有な体験をすることが出来ました。

今回の場合、本当に僕らの舞台を楽しんで頂くためにはもしかしたら全てのステージを観て頂かなければならず、稽古期間も含め全ての瞬間を共有して頂かなければならなかったのかもしれませんが、それは無理な話です。

それに、全て観てもらえれば、などと言うのは逃げている気もするので、やはりどの回に誰に観て頂けたとしても、そこで生まれたものや感じたものがこの公演の全ての感想であっていいのだと思います。

どんな舞台であろうが、生きた人間が舞台上にいる限り厳密には全く同じものというのは生まれようがありません。必ず違います。カスガイ主宰の玉置君は稽古期間を通じて、そういったことを最大限突き詰めるとどうなるのかやってみたかったと言っておりました。これは一つの興味として有り得るし健全な思考・志向だと僕は思っています。それを今回は出来たんじゃないかなと、出来るメンバーが揃ったし出来るように稽古出来たし、という思いがあります。

今回一番気をつけたこと、というか、今回の舞台でやらなければならないことは一つだけで、それは今その場で起こっていることに嘘を吐かないこと、だったなぁと振り返って思います。それはまぁ常にそうあるべきなんですが、今回はその嘘が致命的になる舞台だったなぁと思うんですね。それは転じて言えば舞台上にいる人間を、もちろん自分も含め受け入れることなんです。2ヶ月の稽古期間はその訓練に8割以上を割いていた気がします。

まずは相手を知ること、それから自分を知ること、自分を知ってもらうこと、相手を知ってあげること、そういうやり取りをずっとやってきました。そういうことをやれるというのは凄く豊かなことだと思うんです。脚本にあることを演出通りに全うすることの他にあることなのかもしれませんが、そうやって得たものは絶対に舞台上で自分に返ってくる。毎日毎ステージ返ってくることを実感出来た舞台でした。

玉置君含め共演者の皆、お客様、スタッフの皆さん、応援して下さった方々、僕にこの経験をさせてくれて本当にありがとうございました。この経験を出来るように生きてきてくれた自分にも感謝します。

カスガイのことを少し話します。

カスガイは人を繋ぐ団体です。演劇を通じて(もしかしたら演劇を通じない時もあるかもしれませんけど)人と人を繋げる集団です。

お芝居をやる上でそれはとても大事なことだと思います。作り手側の繋がりはもちろん、お客様との繋がりも含めて必要なことです。そんなことは当たり前じゃないか、何を今更、と言われる方も思われる方も反発を感じる方もいるかもしれません。でもその当たり前のことをおろそかにしてはいないだろうか、おろそかであることが普通になってはいないか、という危惧が僕の中にもあって、その危惧と玉置君の意思が通じた所に、僕とカスガイの繋がりはあります。その当たり前のことを、彼ほどちゃんとやろうとしている人がどれくらいいるか、周りを見てみて下さい。

僕と彼では多分、アウトプットの仕方が違う所が多々あって、カスガイでやっていることを僕がmonophonic orchestra(僕が主宰しているユニットです)で同じようにやることは恐らくないでしょう。彼の100に僕が100全て同意しているわけではなく、10~20、時には30、もしかしたら100、違うことを考えていることだってあります。当然、人間同士ですから。

でも彼がやっていることややりたいこと、やっていきたいと思っていることは、僕も必要だしなくなってはいけないことだと思っているし、それを彼ほどの熱量をもってやっている人を他に知らないので、ごく当然の流れとしてカスガイという団体を通して彼についていこう、彼を支えていこうと僕は思っています。

カスガイメンバーは皆仲が良いですけど、僕は全員のことを演劇人としてもベストだと思っているので、だから演劇でも深く繋がっています。彼らを害する人とは本気で闘います。

そういうの、気持ち悪いと思う人もいるかもしれません。でも僕は、そういう奴らがいてもいいと思っていて、そういう奴らの作るものの熱量を信じている節もあるんです。

今後どうなっていくか分かっていることと分かっていないことがありますが、少なくとも僕らは人と人を繋げるために存在し続けるだろうということ、それは分かっています。分かっていないことに関しては、年月を重ねて楽しみたいと思っています。

今後ともよろしくお願い致します。

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