お前にホの字・2(後編)

○ひみつのホッコちゃん・ファイナル・ディシジョン

何やかんやで撮影開始に辿り着いたホッコちゃん、モモコ、オッポナ!そこへガキ大将の准将と軍曹の兄弟、モモコちゃんの弟カン平、そして人殺しの犬も加わって現場はてんやわんや!どうなる、ホッコちゃん!

「カット、カットォ!ソコハモットジョジョウテキニオネガイシマース!」
「凄い、ホッコちゃんったらすっかりポール・トーマス・アンダーソンになりきってる!これは『マグノリア』以上の作品になりそう!ね、オッポナ?」
「ニギャー!腹ヘッター!サラミ食べたい!!」
「うるせー!変なもの食ってるんだな、いつも!!」
「おい女!下賎な女!!」
「なによ准将。別に下賎じゃないんだけど」
「ワシの出番はまだなのか?」
「俺の出番もだぜ、ケヒヒ…」
「ケヒヒ!?あんたの弟どんな笑い方してんのよ!?」
「早く肉裂け血が噴出す修羅場へと辺り一帯変貌させてやりたいなぁ、兄者。ケヒヒ…」
「兄者って呼んでるの!?それからハムレットはそこまで残酷な話じゃないから!」
「そうだな、軍曹、いや、鬼軍曹」
「なんで言い直したの!?」
「ニギャー!!」
「どうしたの、オッポナ!」
「この犬に右後ろ足を食い千切られたニャース!」
「こら犬!!」
「オマエラウルサイデス!オンセイヒロッチャウカラシャベルナヨ!」
「その片言うざったいからやめてよ!ところでホッコちゃん、もといポール、私のシーンはまだ?見た所たくやくんのシーンの撮影は順調に進んでいるようだけど…」
「ハムレットハドクハクガヒジョーニオオイカラシカタナイデス」
「そうだけど…」
「おい、メリケン!ワシが人民共をひれ伏させ、田畑を焼き、金品を奪い尽くし、女共を好き放題犯すシーンはまだか!!」
「ねーよ、そんなシーン!!」
「早くコイツに兵士共を噛み殺させてやりたいなぁ。ケヒヒ…」
「ねーよ、そんなシーン!!どんな教育でこんな五歳児が育つんだよ!!」
「ニギャー!!」
「どうしたの、オッポナ!」
「この犬に左後ろ足を食い千切られたニャーミー!」
「ほらぁ、お前がそんなこと言うから!!」
「ね、姉ちゃん…」
「あ、カン平、ごめんね、こんなことに付き合せちゃって」
「ううん、いいんだ。それより姉ちゃん、俺昨日見たんだ、見ちゃったんだ…」
「え?なに?何かあったの?」
「姉ちゃんが、お風呂に入ってるの…」
「そりゃ入るよ!普通だろ!ちょっと心配しちゃったじゃねーか!…てか何見てんだよ、この変態が!」
「ヤッパリキンシンソウカンネ。イマノオンセイハヒロッテオイタヨ」
「余計なことすんなや!」

(ボワワーン)

「さーて、とりあえず監督業は置いておいて、次はハムレットとガートルードとクローディアスとポローニアスのシーンを撮るよ。軍曹、その犬と一緒に来て」
「この犬がポローニアスだったんだね」
「ようやく出番だ。なぁ、ショコラ」
「ショコラ!?そんな甘ったるい名前絶対合ってねーだろ、その犬!!」
「ニギャー!!」
「どうしたの、オッポナ!!」
「下半身を持っていかれたニャンチュー!!」
「死んじゃうだろ、それ!!」
「大丈夫、どうせ生えかわりの時期だったから…」
「生えかわるの!?」
「よーし、じゃあ早速堀ちえみに変身よ!!」
「ホリー・ハンターじゃなかったの?」
「色々版権とかの問題があったのよ…」
「版権!?」
「行くわよー!!ホキョキュミュリャ、リャミャ、ラマアルパカ、アレグロコンフォート、ホラティウス、ポルトガンバレ、キノウノバンゴハンハホネツキカルビ、アレ、オマエチョットセガノビタンジャネ?コレデアキノタイカイノレギュラーモジュウブンネラエルナ、バンカラバンザーイ!!堀ちえみになーれ!!」
「もうよく分からん!!」

(ボワワーン)

「なったー!!じゃあモモコ、もうちょっとの辛抱だからね!!」
「うん、待ってる!!」
「あ、下半身が生えてきたニャンピョウ!!」

―三時間後―

「お待たせ!!やっと終わったよ~!!」
「お疲れ、ホッコ!!どうしてその犬の口元が血でベットリなのかはあえて無視するわ!!」
「じゃあ次こそモモコの出番!!準備はオッケー?」
「うん、もう十八時間近く待ってたから大丈夫!!」
「ならよかった!!じゃあ准将、モモコ、行くわよ!!」
「ウム、ようやくワシの出番か!!」
「よーし、行くわよ…って、なんで准将?」
「いやほら、ハムレットと、オフィーリアのシーンだから」
「……は?」
「だから、ハムレットとオフィーリアのシーンだから」
「…え?ハムレットはたくやくんじゃないの?」
「そうだよ」
「…あれ?じゃあ准将はなに?」
「ハムレットよ」
「はぁ!?なんでハムレットが二人いるのさ!!」
「なにモモコ、何も知らないのね。だからね、たくやくんが演じたのは先王ハムレット、死んだ亡霊のお父さんで、准将が演じるのは主人公のハムレットよ」
「はぁあ?さっき独白云々って言ってたじゃん!!」
「それはまぁ…」
「あんた、たくやくんがカッコいいもんだから、自分だけ美味しい汁を吸おうとしたんでしょ!?」
「足が元通りになったニャーメンズ!!」
「うるせー、低級獣が!!」
「それはまぁ、ほら、魔が差したっていうか…」
「あんた、まさか色々なシーン撮っちゃったの?」
「そうね、過去に愛し合うシーンとか…」
「こらーっ!!」
「でもやっちゃったからにはしょうがないし…准将も黙ってないと思うし…」
「こんだけ待ったんじゃ、さぞかしウハウハさせてくれるんじゃろ、女!?ゲハハハ!!」
「ケヒヒ、兄者もワルだぜ…」
「え、ちょっとあの…」
「頑張ってね、モモコ!!」
「うぉおーいっ!!」

…その後、完成した映画は決して公開されることはなく、ネットで流出した際はなぜかアダルト扱いだったという。さすがだね、ホッコちゃん!!

~おわり~

Previously