今年読んだ本。

さーて、須貝です。

そろそろ今年って奴を総まとめしたい時期にさしかかってきましたね。

誰だってそうかもしれませんが、12月も末の頃になってようやく、「あれ?今年って何してたっけ?」なんて思って焦って一年を振り返ろうと、自分が何か功績を残したかどうかなんてことを再確認したがるもんですが、僕なんかは「結局去年とあんまり変わってなくね?」なんて皮肉な結果を発見するだけなんですな、いつも。

ならばそれに対抗してやろうと。今年一年を真正面に向かい合って振り返るシリーズです。まずは「今年読んだ本」。早速何読んだか思い出せてもいない状態ですが。

1.『情事の終わり』

・グレアム・グリーンの長編小説です。グレアム・グリーンを知らなくても、『第三の男』は知っているでしょう。その原作者です。

・僕はこの人の作品は『おとなしいアメリカ人』という長編小説で初めて読んだわけですが、どこか虚無的な、寂しさや空しさ、人の持つ空ろな不安感とでもいうか、そういったものが全編に溢れていて、この人の人間への絶望や愛といったものが常にこの人の作品の中で闘っているのだと思ったのでした。

・この『情事の終わり』に関してはカトリック信仰ということが作品の根幹をなす要素の一つとなっているのですが、かといって私たちに理解しがたいものであるというわけでは僕はないと思います。

・もう一度読んでみないと紹介という形で皆さんに提示できないような気がしますが、僕にはこの物語は、「愛するということ」と深く向き合った作品だと思われました。愛するということを深く考えた結果生じる矛盾のようなもの、愛し合っていながら結ばれない、それを受け入れない人間、ジッドなんかも『狭き門』で似たような題材に取り組んでいますが、それとはまた違った形のような。難しいですけど。

2.『白夜行』

・ドラマ化とかされてましたが、そっちは一切見ていません。

・元々あまり日本人作家の、しかも今の人の作品は読まないんですが、これは先輩の岡部さんに薦められて読んだ本。最初は取っ付き難さなんかもあったんですが、読んでいく内に嵌まり込んでしまいました。

・なんというか、ダークヒーローとダークヒロインへの憧れ、その二人の持つ悲しい過去、そこからある意味這い上がって、というか、その傷が決して癒えることはなく、二人の社会に対する復讐劇を見ているような、そんな作品でした。暗い物語なんですが、どこか爽快感がある。そんな不思議な作品でした。

・主人公の二人に関わる人たちが結構皆一様に、その二人のせいで不幸な目に遭うんですね。それが一歩間違えると笑えるラインで、そういうのが僕は好きなので、他の作品も読んでみたいななんて思いましたね。

3.『愛その他の悪霊について』

・『百年の孤独』のガルシア・マルケスの作品。本当は他のものを図書館で借りようとしたんですけど、なかったんですね。でもこれもよかった。

・この人の作品は幻想的で雄大な世界が緻密な描写と圧倒的な現実感によって構築されていて、この作品に関しても「生まれてから一度も髪を切ったことのない少女」というモチーフからスタートした、一つの完成した物語世界なのです。

・この人の作品を読んでいると、なぜか僕はいつもドストエフスキーなんかと比較してしまうんですけど、彼の作品も細密な人間描写に基づいていて、そういった技術は画家で言えばデッサンのようなもので、ピカソだってあんな変な絵を描くけどデッサン力に関していえば驚くべきものを持っていたわけです。ダリもまた然り。

・ドストエフスキーの話に戻ると、彼の書くものは、人間が狂う一歩手前の世界、もしくは狂っているけど誰もそのことに気がついちゃいない、そんな世界だと勝手に思っているんですが、暗い情熱とでもいうようなものを強く感じます。幻想的というよりは妄想的、幻覚のような世界ですが、マルケスの世界は言葉通りに幻想的です。どちらの世界観も雄大で、どちらの世界も突き詰めればそれぞれの大陸の持つ血の色濃さとでもいうようなものを感じます。

4.『イコン』

・急にスパイ小説ですが。『ジャッカルの日』のフレデリック・フォーサイスの最後の小説です。

・最近ではめっきり文学作品みたいなものばっかり読む方が多くなったんですけど、そういう本と並行して、ミステリーやスパイ小説といった展開の早い、というかアクションのあるものを読んだりします。

・これは卒論書きながら息抜きにと思って読んでいたんですが、意外と面白かったですね。架空の設定なんかに基づいているんですが、ロシアの現状やら(といっても十年前ですが)スパイ活動やらなんかがかなり緻密に描かれていて。

・本を読む時はいつも、これを映画にするならどうしようか、なんてことを考えながら読んでいますが、映像化したら面白そうな本でした。

他には何読んだっけかなぁ。色々読んでるんですけどね、たぶん。『ダ・ヴィンチ・コード』なんかも読みましたけど、結構先が読めて(暗号なんかも簡単に解けてしまって)、映画はあんまり観る気がしませんでした。いや、面白いと思いますけど。

今年は写真集や画集なんかを結構たくさん買いました。来年も色々欲しいものがたくさんです。

今はウィリアム・フォークナーの『アブサロム、アブサロム!』を読んでいます。一度読みかけて断念したので、リベンジですね。うまい具合に嵌っていて、最後まで一気に読めそうです。来年もたくさん本を読もう。

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