奈良旅行記~番外編・京都慕情~

京都はやはりその町並みが非常に美しい場所である。
元、都であった地域は、町全体が碁盤の目の様に整備されていることはよく知られていることではあるが、昔ながらの家屋は、それ自体が持つ直線に美しさがある。例えば格子状の扉や、通りに沿って真っ直ぐに伸びた塀など、個人の邸宅という目的を超えて、町としての調和が考えられている。
ニューヨークの摩天楼が縦の直線の美しさであるとすると、京都は横の直線の美しさである。どちらの町(街)もブロックで区切られた区域の集合都市であり、どちらも人がよく似合う。直線的な京都の町は、人がただそこを歩くだけで、シーンとして成り立つ。単純に人が体の部位として持たぬ直線が、町と人との調和という形で現れているのかもしれない。
簡素で、無駄なものが無計画に足され続けることもない。実に機能美に溢れた町である。

京都の町には、露骨でない、住人たちの素朴な愛がある。変わらぬ時の流れがある。少なくとも僕には、そんな空間が存在する国に生まれたということは、幸せなことである。

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