どうも、須貝です。
monophonic orchestra 1st session『センチメンタリ』を終えてそろそろ一週間が経とうかという今日この頃、色々と改めて振り返り、この公演の締めくくりとしたいと思います。
まず。総動員は450名でした。450人もの方々にご観劇いただきました。横浜まで来て下さってありがとうございますですよ、ほんとに。僕が前に一人芝居やった時は確か総動員103名とかだったと思うので、うぉう四倍だなぁと取り留めもなく思ったり。
STスポットの皆様も温かく、お世話になりました。いつかまた絶対にやりたい劇場です。僕はあの空間が凄く好きです。
もうなんと言うか、東京だけじゃなくていいと思うんですよ、色々。それはこの公演を終えてさらに強く思ったんですけど、地方公演における演劇環境の良さって方々で皆が言い始めていて、なんでもいいからとにかく手近で観れるものとかじゃなくて、本当にいい環境でいいものを作るということが大事になってくるんじゃないかと思うんです。あーいい環境って座席が、とか立地が、とかそういうことじゃなくて。多分受け入れ態勢的なことが。
演劇に関しては、これから先十年は、地方が熱くなってくるんじゃないかと勝手に思ってます。それに伴って都内が微妙になっていく気がする。勝手にそんな気がしてる。東京でやることに胡坐掻いちゃいかんのです。そんなん当たり前やと言うかもしれませんけど。
『ハチミツとクローバー』の最終巻で、羽海野チカさんが連載を終えた時のことを、
「~このキモチを何にたとえたら良いのでしょう。この6年間寝てもさめてもハチクロのみんなの事ばかり考えていました。つらい時も嬉しい時もずっと一緒でした。家族みたいなものだったんです。でも家族はある朝起きたらみんな消えてました。~」(単行本より抜粋)
と語ってらっしゃいます。
程度の違いはもちろんあれど、僕は羽海野さんがこう言っている感じ、なんとなく分かりました。
僕も二年ほど寝かせたり時々起こしたり形にまとめてみたり崩して再構成してみたり、諦めて最初から書き直したりしながらも、あの作品という形で結実したキャラクターたちとずっと付き合ってきました。
裏設定ばかり溜まっていき、キャストの皆さんに伝えたこともあればあえて伝えなかったこともたくさんあります。
だから作品としてこの話が完成に近付くに連れ、いつまでも終わらなければいいのにと思っていたのです。本当は。
僕の場合は羽海野さんのように突然ではなく、僕が作り出したキャラクターを役者さんたちが自分のものにしていくに連れ、一人ずつ僕の脳内須貝アパートから、「じゃあもう行くわ」と言って去って行くような、そんな感じでした。
だから稽古が進んで行く内に、「あぁ、もうあいつは俺のもんじゃなくてあの人のもんだ」と少しずつ少しずつ、確かに噛み締めなければならなかったのです。そりゃあ寂しいもんなんです。
自分が役者をやっている時はいつも、ある一つの作品がある時に、脚本家は物語の専門家、演出家は上演の専門家、そして役者は与えられた役の専門家であるべきで、最終的には(あくまで最終的には)脚本家や演出家でさえ、その役に携わる役者には、その役に関する限り絶対に敵わないと思っているんです。
そして実際に、最終的には役者さんが「こいつはこうだと思う」ということを言って来た時、「多分あなたが言うんだからそうなんだろう」という気持ちになっていたのです。その辺のやり取りが、新鮮で楽しかった。
僕はあのキャラクターたちに、それを演ずる役者さんたちに、助けてもらいました。気持ちを楽にしてもらえました。
僕が言って欲しかった言葉や、言いたかった言葉や、言いたかったけど自分の中でうまく処理出来なくてまだ言えずにいる言葉を、苦しんでもがいて、それでも言葉にしてくれていて、しまいにゃ言葉に出来なくなってもちゃんと伝えてくれていて、それが、そういう形で存在する演劇ってどうなんだ?という気もするけど、まぁいっか、少なくとも俺は救われた、という気持ちにさせてくれたんですね。
段々何を言いたかったのか分からなくなってきましたが、今は、「次はこうしよー」ということを性懲りもなく考えているので、つまりは案外折れずに案外近い内にまたこういうことをやるかもしれないなぁとだけ、言っておきたいのです。
ご来場下さった皆様、応援して下さった皆様、本当に、本当にありがとうございました。
どうやら多分、僕は大丈夫っぽいです。今後も演劇を続けていきたいと思います。