苦労と日々。

どうも、須貝です。

役者、という仕事をやっていると、それ以外の職種の人には「大変だね」とか「食えないでしょ」とか言われますが、実はそうでもありません。確かにお金がもう少しあればいいなとは思いますが、それは誰だってそうでしょう。年に1億円以上稼ぐ人だってもっともっとと思うんですから、欲しがりは人間の根源とすら思えます。

僕の場合に限って言えば、豊かではありませんが困ることはほとんどありません。借りているお金もありますが、返せないほどバカげた金額でもありません。「売れない役者時代」や、「苦労の多かった下積み時代」、「まだ無名の頃」なんてフレーズはよく聞かれますが、いまいちピンときません。理解は出来ますが。実際売れていないし下積み時代なんだろうし無名ですが。

お金を取ってお客さんの前に出るからには僕が下積みか無名かなんてことは関係ない、有名俳優の誰と比べようが変わりないわけだし、僕は今自分が関わっている作品を「下積み」だとか「苦労」だとか「経験」だとか思えないわけで。あくまで「作品」です。第一、「無名」って。僕に名前はあるし堂々と出していますよ(もちろん「無名」の意味って「名前が広く知れ渡っていないこと」なんですけど)。

僕の名前は須貝英です。以降お見知りおきを。

同じく役者をやっている方からも、「年にこれだけ出演していると大変でしょう」と言われますが、こちらも同じくそうでもありません。ちゃんと一つの作品のクオリティを落とさないペースでやっているつもりなので。かつ生活も出来るラインをちゃんと保てていると思います。多分。
恐らく何本か同時に進む方が、僕はペースを保ちやすいんだと思います。一本なら一本に集中しないと出来ない、というタイプの方もいますが、僕はそちらの方が苦手みたいです。

年に何本出ているかを役者の凄さだと思っている方も多いようですが(事実需要があるということは凄いことですが)、それを自慢のように思っている役者さんももしかしたらいるかもしれませんが、これは間違いだと思います。お客さんは「あの人、年に10本もお芝居に出ているのよ!」なんて観点で観に来ないでしょう、当然。

大事なのは、その人が出ている作品が全て面白いこと。僕は去年8本出演がありましたが、その全てが「面白いでしょ?」と誇れる作品でした(それぞれの好みはあるでしょうが)。これは自慢です。これでもし半分くらいしか満足いっていなかったとしたら、それは本数が多過ぎたということだろうし、僕に仕事を選ぶセンスがなかったということだろうし、役者としての管理力不足ということになります。

もし今誰かに、「苦労しているでしょう」と聞かれたら、「いえ、全く」、と答えるだろうと思います。
自分がやりたいことをやるために伴う諸々の力尽くしは、全く「苦労」ではないと僕は思います。これでもし僕が、演劇をやりたくてやりたくて仕方がないのに、親の介護をせねばならず、一日18時間工場で労働しながら借金を返している、というのであればそれは苦労です。やりたいことがやれていないわけですから。しかし僕の場合は違います。

自分で選んだ道のはずなのに、苦労しているんですよ大変なんですよと暗に主張なさる方が時々いらっしゃいますが、「じゃあ辞めれば?」と思います。あなたさえ満足なら、僕らはあなたが何をしようが基本的には構わないわけですし。犯罪だったら止めますけど。

そんなこんなで、苦労を知らないぬるま湯育ちの26歳です。これからも出来れば苦労はしたくないものです。

Previously