「来るなー!!来たら…アレだぞ、死ぬぞ!!もちろん飛び降りてな!」
野口!!…あいつ、なにやってんだ…しかも自殺しかけなのに凄みが感じられない…
僕たちが川村先生のベンツに乗せてもらって校庭に着いた時には、もう四台ほどのパトカーと、部活の朝練で早くから学校に来ていた生徒たち、先生、騒ぎを聞きつけた近隣住民が黒い人だかりを作っていた。
彼らの視線の先には、朝日で眩しくてよくは見えなかったが、屋上のフェンスにしがみついている人影がある。野口だ。
「きみー、下りてきなさーい、君はまだ若い、死ぬのはまだ早い!」
「そんなの分かってるよ!僕は若いよ!十代だよ!それとも何?僕がフケ顔を気に病んで死のうと思っているとでも!?」
よく言うセリフじゃんか!聞き流せよ!
「それに死ぬのに早いもクソもあるか!人は若かろうが老いていようが死ぬときゃ死ぬんだ!」
だから聞き流せって!
「うんうん、よく分かった、OK!君の言ってること、おまわりさんよく分かったから!」
ほらなんか子供扱いされた~。
「ほんと~?」
簡単に心動くなー!
「でもダメだ!騙されないぞ!僕は死んでやるんだ!」
別に誰も騙そうとなんかしてないって。
「くそ~、バレたか~!!」
おまわりさん!?騙す気だったの?それからそういうセリフはメガホン通しちゃダメ!!
「上田、しばらくしたらはしご車が到着するらしいわ」
「田所さん!でも今の野口の状況だったら素直にはしご車で救助されるとは思えないよ…」
「全くその通りよ。…私たちで説得に行きましょう」
えっ!?
「あいつ死ぬ度胸なんかないだろうけど、まかり間違って死んじゃうかもしれないでしょ?鈍そうだし」
…うーん、確かに。
「それにこのままテンションが上がって自殺の原因なんて喋られて御覧なさい、私の悪行がばれてしまう。その前に口を封じなきゃ…」
う~ん…え?今なんて?
「今がチャンスよ!」
なんの?
「どうせここには所轄の警官しかいないし。楽勝よ」
だから何に勝つの?しかも所轄の警官って…いち女子高生のセリフじゃないよ!
「事後処理も簡単そうね…」
だから何の事後を処理するんだよ!あんた野口を殺す気だな!?
「お互い様よ!」
怒られた!
「そうと決まれば早速行きましょう」
「でも屋上には警察の人がいるんじゃ…」
「バカね、もしそうなら野口なんてあんなビビり、さっさと投降してるでしょ。屋上の鍵を持ってる用務員さんがまだ学校に来てなくて連絡もつかないの」
「なるほど…じゃあ僕らも入れないんじゃない…?」
「ここに鍵があるわ」
えーっ!!
「ど、どうやって手に入れたの?」
「……。」
黙らないでよ!
「よし、行くわよ!!」
不安だーっ!!
~つづく~