僕は放課後、先生に野口のことを問いただしてみることにした。
「先生!」
「オウ、上田か。陸上でトリノを目指したくなったか?」
なぜそうなる!?トリノは冬季五輪だし、あんた水泳部の顧問でしょうが!
「あ、トリノは冬季五輪だし、俺は水泳部の顧問だったっけ」
えぇ!?あぁ、そうですね…
「水泳でその軟弱ボディーを鍛え直したくなったか?」
「いえ、そうじゃなくて…」
「俺にホレたか?」
ホレるかーい!!
「いや…野口のことなんですけど…」
「ホレたか?」
ホレるかーい!!
「いえ…先生、あいつのこと火星人って言ってたし、あいつも自分のこと火星から来たって言ってますけど…何でそんな嘘つくんですか?」
「(ブーッ)ゴホゴホ、何を言うんだ!う、嘘じゃないよ!お前がへんなこと言うからトマトジュース吹いちゃったよ!」
紛らわしいよ!一瞬吐血かと思ったよ!マグカップでトマトジュースを飲むな!
「だってそんなこと信じられるわけないじゃないですか。僕たち高校生なんですよ?」
「でも他の皆は信じたぞ」
それはきっと他の皆が底抜けのバカだからです。
「他の皆のことはよく知りませんけど…あいつ、埼玉から来たんでしょう?」
「……いつ気づいた?」
彼が最初の自己紹介でかんだ時に…
「いつというか、なんとなく…」
「いつ確信を得たんだ?」
あなたが埼玉と言った瞬間です。
「別に誰にも言ったりしませんから、本当のことを教えてくださいよ。彼、イジメを受けて、それで転校してきたんでしょ?」
「上田…お前はすごいやつだ…誰かから聞いたわけじゃないよな?」
ほぼあなたから聞きました。
「確かに野口は埼玉から転校してきた。お前の言うとおり、酷いイジメに耐えかねてな…」
「…どうして火星から来たなんて嘘ついたんですか?」
「フム、それに関しては野口と二人で三日三晩寝ずに、毎日七時間の睡眠をとりながら考えたんだ」
どっち!?
「あ、別に一緒のベッドで寝たわけじゃないぞ」
誰も疑ってねーよ!あんたそっちか!
「お前にこんなこと言うのもあれなんだがな、いじめられる人間という奴には、いじめられるオーラみたいなもんがあるんだ。人に虐げられやすい性格というか…人をサド気質に変えてしまう何かだな。いじめている人間が番長的な不良かと言ったら、大抵そうじゃない。いじめられる気質の奴に、サド気質を刺激されたんだ」
「はぁ…」
「野口もそういう奴だ。その気質は並大抵のことでは変えることができん。長い時間をかけないとな」
「それと火星と何の関係が…?」
「そこで俺たちは考えた。奴自身を変えることはできなくても、奴のプロフィール自体を変えれば、クラスの奴らも奴に対して一目置き、いじめようとは思わなくなるんじゃないか、とな」
それで火星出身にしたってこと?なんかよく分からない思考の過程だな…
「それはとても簡単に思いつきそうな方法ですけど…だからって…」
「なに!?簡単だと!?俺と野口はその結論に達するのに6~28時間かかったんだぞ!」
その時間の開きは何?
「あ、いや、すいません。その素晴らしい解決策については置いといて、どうして火星とかにしちゃったんですか?帰国子女です、とかにすればよかったのに」
「帰国子女ってお前、野口は男だぞ!」
「女」だからって女性限定の言葉じゃないから…
「いや、つまり、海外にいた、とかそんな風なこと言えばよかったのに…火星って…」
「分かってないな~。そんなこと言ったらボロが出るだろ?あいつは英語なんか喋れないし。あいつ自身は成績悪いし、家だって別に金持ちじゃないし、さして人格者でもないしさぁ、ぶっちゃけ」
うぉーい!ぶっちゃけすぎだよ!
「だから、あいつ自身はどうしようもない奴だから、何言ったって結局ボロは出るの。火星って言っておいたら、どうせ誰も火星のことなんか知らないし、あいつがバカだったり、人とコミュニケーション取るのが苦手なことも、火星人だから、とか言ってごまかせるだろ?」
なるほどねぇ…それならうなずくしかないか…
「上田、だからこのことはくれぐれも俺とお前の間だけの秘密だ。野口にも、お前が気づいているってことは、出来るだけ悟られないようにしてくれ」
「…分かりました」
バレるのも時間の問題だと思うんだけどな…
「松沢先生~、お電話です。埼玉から転校してきた野口君のお母様から」
へーイ!!もうバレてる!!
「…え?な、何を言ってるんですか、あいつは火星から来たんですよ…」
「もう、松沢先生、トリップするのはプライベートだけにしてくださいね♡」
わぁ!学園のアイドル、社会科の川村先生、辛辣!
「も、もう一度罵ってもらえますか?」
早く電話に出ろよ、この変態教師!
「この筋肉ブタ!!」
川村先生も罵っちゃだめ!!
「ウヒョーイ!!」
だから早く電話に出ろよ!
「アフフフフフ…」
あ…!この笑い声は…
「(ガラガラ)話は全て聞かせてもらったわよ!」
クラス委員長の田所さん!!
~続く~
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やっぱえいちゃんゲ○好きじゃん!
○イ好きぃ。
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違う!断じて!違う!声を大にして!