火星での生活・2

僕は放課後、先生に野口のことを問いただしてみることにした。

「先生!」
「オウ、上田か。陸上でトリノを目指したくなったか?」

なぜそうなる!?トリノは冬季五輪だし、あんた水泳部の顧問でしょうが!

「あ、トリノは冬季五輪だし、俺は水泳部の顧問だったっけ」

えぇ!?あぁ、そうですね…

「水泳でその軟弱ボディーを鍛え直したくなったか?」
「いえ、そうじゃなくて…」
「俺にホレたか?」

ホレるかーい!!

「いや…野口のことなんですけど…」
「ホレたか?」

ホレるかーい!!

「いえ…先生、あいつのこと火星人って言ってたし、あいつも自分のこと火星から来たって言ってますけど…何でそんな嘘つくんですか?」
「(ブーッ)ゴホゴホ、何を言うんだ!う、嘘じゃないよ!お前がへんなこと言うからトマトジュース吹いちゃったよ!」

紛らわしいよ!一瞬吐血かと思ったよ!マグカップでトマトジュースを飲むな!

「だってそんなこと信じられるわけないじゃないですか。僕たち高校生なんですよ?」
「でも他の皆は信じたぞ」

それはきっと他の皆が底抜けのバカだからです。

「他の皆のことはよく知りませんけど…あいつ、埼玉から来たんでしょう?」
「……いつ気づいた?」

彼が最初の自己紹介でかんだ時に…

「いつというか、なんとなく…」
「いつ確信を得たんだ?」

あなたが埼玉と言った瞬間です。

「別に誰にも言ったりしませんから、本当のことを教えてくださいよ。彼、イジメを受けて、それで転校してきたんでしょ?」
「上田…お前はすごいやつだ…誰かから聞いたわけじゃないよな?」

ほぼあなたから聞きました。

「確かに野口は埼玉から転校してきた。お前の言うとおり、酷いイジメに耐えかねてな…」
「…どうして火星から来たなんて嘘ついたんですか?」
「フム、それに関しては野口と二人で三日三晩寝ずに、毎日七時間の睡眠をとりながら考えたんだ」

どっち!?

「あ、別に一緒のベッドで寝たわけじゃないぞ」

誰も疑ってねーよ!あんたそっちか!

「お前にこんなこと言うのもあれなんだがな、いじめられる人間という奴には、いじめられるオーラみたいなもんがあるんだ。人に虐げられやすい性格というか…人をサド気質に変えてしまう何かだな。いじめている人間が番長的な不良かと言ったら、大抵そうじゃない。いじめられる気質の奴に、サド気質を刺激されたんだ」
「はぁ…」
「野口もそういう奴だ。その気質は並大抵のことでは変えることができん。長い時間をかけないとな」
「それと火星と何の関係が…?」
「そこで俺たちは考えた。奴自身を変えることはできなくても、奴のプロフィール自体を変えれば、クラスの奴らも奴に対して一目置き、いじめようとは思わなくなるんじゃないか、とな」

それで火星出身にしたってこと?なんかよく分からない思考の過程だな…

「それはとても簡単に思いつきそうな方法ですけど…だからって…」
「なに!?簡単だと!?俺と野口はその結論に達するのに6~28時間かかったんだぞ!」

その時間の開きは何?

「あ、いや、すいません。その素晴らしい解決策については置いといて、どうして火星とかにしちゃったんですか?帰国子女です、とかにすればよかったのに」
「帰国子女ってお前、野口は男だぞ!」

「女」だからって女性限定の言葉じゃないから…

「いや、つまり、海外にいた、とかそんな風なこと言えばよかったのに…火星って…」
「分かってないな~。そんなこと言ったらボロが出るだろ?あいつは英語なんか喋れないし。あいつ自身は成績悪いし、家だって別に金持ちじゃないし、さして人格者でもないしさぁ、ぶっちゃけ」

うぉーい!ぶっちゃけすぎだよ!

「だから、あいつ自身はどうしようもない奴だから、何言ったって結局ボロは出るの。火星って言っておいたら、どうせ誰も火星のことなんか知らないし、あいつがバカだったり、人とコミュニケーション取るのが苦手なことも、火星人だから、とか言ってごまかせるだろ?」

なるほどねぇ…それならうなずくしかないか…

「上田、だからこのことはくれぐれも俺とお前の間だけの秘密だ。野口にも、お前が気づいているってことは、出来るだけ悟られないようにしてくれ」
「…分かりました」

バレるのも時間の問題だと思うんだけどな…

「松沢先生~、お電話です。埼玉から転校してきた野口君のお母様から」

へーイ!!もうバレてる!!

「…え?な、何を言ってるんですか、あいつは火星から来たんですよ…」
「もう、松沢先生、トリップするのはプライベートだけにしてくださいね♡」

わぁ!学園のアイドル、社会科の川村先生、辛辣!

「も、もう一度罵ってもらえますか?」

早く電話に出ろよ、この変態教師!

「この筋肉ブタ!!」

川村先生も罵っちゃだめ!!

「ウヒョーイ!!」

だから早く電話に出ろよ!

「アフフフフフ…」

あ…!この笑い声は…

「(ガラガラ)話は全て聞かせてもらったわよ!」

クラス委員長の田所さん!!

~続く~

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