どうも、須貝です。
作品を作る上で何を大事にしているか、ともし聞かれたら、多分こう答えるだろうなぁということがこの間の自分の主宰公演ではっきりしたのですが、まぁとにもかくにもこれだろ、と。
『お客さんを途中で帰さないこと』
ですね。究極的にはこの一点に尽きる気がする。
…などと言うととても低い目標のように思われるかもしれませんけど、馬鹿にしちゃいけませんよ。日本のお客さんって優しいなぁと思いますもん。海外のことよく知りませんけど。僕つまんなかったら帰りますもん。知り合いの出てる舞台でも。最近はありませんが。ま、小さい劇場だと物理的に難しかったりしますけど。
だって考えてもみて下さいよ。例えばチケット料金が3,000円だとするじゃないですか。じゃあ3,000円分のお芝居すりゃそれでいいだろってことになるとそうは問屋が卸さないわけで。
まず交通費。平均して往復500円くらい掛かりますよね?人によってはもっと掛かるでしょうけど。次に時間。劇場への往復に大体最低でも1時間掛かるとします。お芝居が2時間だとすると合計3時間その公演のために費やしていることになります。
もちろん会社勤めの方が多いと思うのですが、ここは分かりやすく時給で考えると、例えば時給1,000円の給金をもらっている人だとすると、その3時間は3,000円分なわけです。
と、いうことはつまり、3,000円のチケット料金のお芝居でも、総じて6,500円分のものを作らないと、お客様と僕らの関係は対等になり得ないわけです。
そう考えていくと、つまらないお芝居に時間を費やすくらいなら帰った方が得ですよね?なんならチケット料金も払い戻してもらいたいくらいなもんです。僕は言ったことありませんけど。でもそれも度胸がないからなだけで、全然、これは要求していいことだと思うんです。作り手の側から言いますが、全然問題ないと思いますよ。その代わり最後まで観て「返金して下さい」はなしですよ。途中で帰る場合の話。
この間ずっと作品を作っていて、稽古場で何度も言っていたような気がするんですが、まず大事なのはオープニング。90分の芝居だったらオープニングのインパクトで15分は稼がないと厳しいです。なので15分後に新たな展開を見せて、さらに30分稼ぐ。45分後に何かしら口直しがあって、1時間が経過します。
人間の集中力って1時間しか保たないらしいっす。確か。ということは1時間を越えてからが演出家の勝負所。ラストへ向かう展開へと突入していって20分を観せ、ラスト10分で締める。とか。例えば。
これはあくまで例えばの時間配分なんでその時々でまちまちでしょうけど、要は途中で帰らせないための工夫なんですね。で、なぜ途中で帰って欲しくないかと言えば、お金を頂いているから。
興行を打つからには収入を得なければいけないわけで、「面白いことをやりたい」も大事ですが、「お客さんに帰らないでいてもらう」ためには必然的に「面白いことをやって」いないといけないわけで。その辺が逆になると、時におかしなことも起こる。
自分で舞台に立っていても自分の舞台を後ろで見ていても、一番怖いのはお客さんが途中で席を立つこと。いつもびくびくしています。だからそういう恐怖もなく舞台に立ち、さもその時間が自分一人の時間のように無駄遣いし、物語を垂れ流し、お客さんがそこに座っているのが当然みたいにしている役者や演出家は僕は許せないです、やっぱり。
舞台上に何も起こっていない時間が流れているのが、一番の無駄です。これは犯罪です。エンターテインメントの原義は確か「間を埋める」だったような気がしますが、言いえて妙です。パンッパンに詰まった状態にしておかねばならんのです、劇場を、常に。
同じような話で、役者をやる時に一番大事にしていること。これは前からそうです。
『降板させられないこと』
です。幸いまだ一度もありません(情報公開前に降ろされたことはありますけど)。だから怪我や病気には本当に気をつけます。ってか当然だけど。
これはなぜかと言うと、ものすっごく単純に、お客さんに自分を観てもらえなくなるから。名前が出ているとイメージがとか、他の方に迷惑を掛けるとか色々ありますけど、それよりも何よりも、自分を観て頂ける機会が減ってしまうから。役者としての信頼も失ってしまいますし。
役者って弱いなーと僕は思ってて、物語とお客さんがいなければ一切成立しないんですね。公演がなければただの人ですし。だから稽古場でも常に、降ろされるんじゃないかとかなりビビりながらやってます。箱庭ももう5年以上やってますが、毎度降ろされるんじゃないかと思いながらやってます。
だから、役を頂いて、その役の上に胡坐を掻いている輩が僕は一番嫌いです。だって有り得るんですよ?降ろされること。呼んでもらったからとか声を掛けてもらったからとか関係ないですもん。「ごめんイメージが合わなかった…」とか、「人間的にやっていけないよ…」とか、仕方がないし。
恋愛だって、告白した方が別れを切り出しちゃいけないなんて、そんな決まりはないでしょ。それと一緒でしょうよと思うんですけどそれは違うかしら。
とにかく最近、いいリズムで公演に参加できているので緩んできてるなと思ってはいるんですが、調子乗ってんじゃねーぞ、と。自分への戒めです。当たり前に思ってんじゃねーぞ、と。舐めるなよ、と。今、その場に必死にしがみつけやコラ、と。
僕が望んで求めた場所なのだから、僕が逃げたり、言い訳したり、けなしたり、見下したり、とにかくそういう、水を差すようなことは、しちゃいかんのです、やっぱり。なぜってそんなん、つまんないし。
とにかく、今。ここ。この場所。僕が足を置き、根を張り、腰を落ち着けるこの場所。ここをより良くしていかなきゃ。今以外の時間は一つもいらない。前はこうだったとか、ゆくゆくはこうなるなんてものは、クソの役にも立ちゃしない。
今、今、今。
英ちゃんこんばんは。
Twitterでは書いてますが、ブログでは初コメントです。
途中で帰ったこと、ありますね。
それ以降にその舞台で起こることを観逃しても全然惜しくないと感じてしまった場合に、帰っちゃいます。
英ちゃんが、チケット代だけじゃなく、その公演を観るためにお客さんが掛けているものを(時間やお金)とてもシビアに意識してくれていることは、本当に嬉しいことなんです。
地方から観に行くと交通費だけで必ず3万はかかるんですよね。500円で劇場に行ける人とはもう世界が違うわけです。
私は観客の立場なので、いつでも簡単に観に行けるとか、観れることを当たり前だと思っていたり、作品や役者さんに対して真摯じゃない観客が嫌いです。
3万かけて観に行くってかなり無理して観に行くってことなんですけど、その対価がやっぱり舞台の上に存在しているから出来るんですよね。
だから英ちゃんが書いてくれたこと、私は凄く嬉しかったです。
コメントありがとうございますm(__)m
今年の3月以降、地方から来て頂いているお客さんと交流を持つことが本当に増えて、なおさら、思うようになりました。もちろんどんな条件で来て頂いている方にも楽しんでもらえなければいけないんですけど、特に。期待を裏切りたくないと、心から思うようになりました。
「作品や役者さんに真摯じゃない観客」という観点は、なるほど、言われてみれば確かにそういうこともあるなと気付かされました。簡単にキャンセルする方とか連絡もなく来ないとか遅れてくるとかよくあるし、携帯電話を切らないとか上演中話しているとかそういうこともやはりあるので、これは、お客様の意識も変えていかなければ、そういう、覚悟を持って観に来るようなものにしなければと僕は、作っている側からはそう考えてきました。
だから、環さんにそう言っていただけると、とても心強いです。本当に、助けられる思いです。
今後とも是非、よろしくお願いします。