茶の味~大体五、六年前には俺だって青春してた~

あまり邦画を観ない。自分から進んで借りることなんて、ほぼない。
友達に誘われて、浅野忠信主演の「ヴィタール」を観に行って以来、邦画は観ていなかった。

そんな僕も最近、TSUTAYA半額オンラインの恩恵に預かり、ずいぶん前から観たいと思っていた、「茶の味」を借りて観た。いやぁ、よかったっすわぁ。

舞台はどこぞの田舎町(どうやら関東のほうらしい)。ちょっとおかしな家族の物語。あらすじをうまく説明できないのでとりあえず観てくれとしか言えないが、映像(あんな田舎に俺も住みたい)、セット(あんな家に俺も住みたい)、キャスティング(あんな家族が俺も欲しい)、音響(鳥のさえずりがいい。そして「山よ」が頭から離れない)、脚本、とにかくどれをとっても良かった。

ウェス・アンダーソン監督の話をしたときも書いたが、石井監督も、相当キャラクターに愛情を持っているのではないだろうか。悶々とする長男、はじめの失恋、新しい恋、なんかあの生徒たちの描写なんかも、あぁこんな感じだったなぁ、と、世の男子は皆懐かしく思うんじゃないだろうか。家族のそれぞれにちゃんとストーリーがあって、それだけじゃなく、すべてのキャラクターにそれぞれちゃんと人生がある。それが、言葉ではなく、役者の表情や間、映像で伝わってくる。「茶の味」というタイトルのように、心が落ち着くような、味わい深い作品だった。忠信兄さんがいい味出してましたね。ウンコの話してる時とか、くっだらない話なのになぜか聞き入ってしまった。ああいう役をやってる時のほうが僕は好きです。我修院さんも相変わらず狂ってた。とにかく豪華キャストが目白押しで皆うまい(が、地味に豪華。草薙君とか岡田君が地味に出てた。監督役は庵野秀明。おばあちゃんは樹木希林で、写真のみの登場。武田真冶も出てた。和久井映見は変な患者役、プラスナレーション)。こんなに安心して観られる映画久しぶりですわ。

あんだけ穏やかな映像なのに老いて見えないのは、登場人物が皆青春してるから。長男が一番わかりやすく青春してるわけだが、全員が全員、自分の超えなければならないものに向かっている。それが嫌味じゃなく伝わってくるところに、脚本と役者のうまさを感じた。監督の演出がうまいのかもしれない。
最後の方、家族みんなでおじいちゃんの部屋に行くシーンは、泣きそうになった。

僕もこれを機に邦画を観よう、と思ったわけで…(北の国から)。※関係はない。

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