クイズ・ショウ~みのさん、ついに人生のファイナルアンサー~

少し前、夜の帝王こと、みのもんたさんが司会を務める「クイズ・ミリオネア」の元ネタ番組(確かイギリス?だったような気がしますが覚えてません)で、会場の協力者が咳の数で解答者に答えを教えるという不正行為があったことが話題になりましたが、テレビ王国アメリカでは50年代に、もっと恐ろしい不正が行われていたのです。

1950年代、アメリカで一世を風靡した対戦形式のクイズ番組、「21」。番組側が希望する解答者に勝たせるために、前もって解答者に答えを教えていたと言う、実際にあった事件を題材とした映画、それが、ロバート・レッドフォード監督の「クイズ・ショウ」です。

ロバート・レッドフォードといえば、「スティング」、「明日に向かって撃て!」、「華麗なるヒコーキ野郎」などで超有名な俳優ですが、監督としても相当な実力を持った人。「普通の人々」では、第53回アカデミー賞で最優秀作品賞、監督賞、脚本賞などを受賞しています(この映画も非常によい映画。作品作りや役者を目指している人は是非見るべき。飾らないけれど真摯な演出が心を打ちます)。

1956年、全米を熱狂の渦に巻き込んだクイズ番組「21」。チャンピオンのハーバートは8週連続で勝ち進むが、視聴率は低下(なぜなら彼はユダヤ人で、冴えない男だったから。インテリとはほぼ遠い貧しくて下品な人だったのです)。スポンサーの命令で新しいチャンピオンを誕生させようとした番組は、名門一家の若くて二枚目の大学教授、チャールズに目をつける。その後も別の番組に出るという約束でわざと答えを間違えたハーバート。今までのチャンピオンと同様に、答えを教えてもらって勝ち続けるチャールズ。スターとなって行く彼の一方で、一向に別の番組を紹介してもらえないハーバートが、腹いせにヤラセの事実をカミングアウトする。

この映画、構造や主題とする事件は単純です。しかしこの映画、見つめているものは非常に深い。それは人間の心の奥に潜む闇です。この作品には純粋な正義は存在しません。事件の真相を追究する捜査官でさえ、チャールズを見逃そうとします。完璧に見える人にだって潜む心の闇。エンターテイメントにはびこる闇。意地汚く一攫千金を狙う被害者の心の闇。そういった人々の赤裸々な姿を、飾り付けることなく、どこまでもリアルを追求して描いた作品だと思います。いわゆるスターや有名俳優はあまり出ていませんが、演技は一級、演出も一級です。「普通の人々」と合わせて観てみてください。

Previously