フランス旅行記・その4


どうも、須貝です。

昼、明るい時間帯にチラリと電車から見かけたエッフェル塔と、夜、間近に見るオレンジ色にライトアップされたエッフェル塔というのは、やはりどこか印象が違いますが、周囲に高い建物が無いため、パリの夜の空にぽっかりと建っていて、それが昼も夜も変わらず美しいと思いました。

近付くに連れて、エッフェル塔に向かう人々、興奮した様子で帰ってくる人々の数が増えていきます。ちなみにもう0時近い時間帯。結構人がいるんですね。

途中、美味しそうなパニーニ屋さん(ホットドッグやクレープも売っている)を発見。皆で食べます。鉄板で焼いて、その場で作ってくれるんですけど、めちゃめちゃ美味しいんですね。ハムとかチーズとか、ホットドッグも美味しい。まずパンが旨い。フランスに来て初の地元の味。屋台のおっちゃんもいい人で、なんだか心も体もほこほこ温まります。

…温まったのですが、その夜は風がとても強くて、寒い。パリはまだまだ冬の天候で寒かったんですが、もうとにかく風が、強い。集合する前にチャチャッとシャワーを浴びて来てしまった上に少し薄着で来ていた僕は、激しく湯冷め。後悔です。本番前に体壊したらどうしようって話なんですが、油断していましたね、完全に。

とりあえずたけさんにマフラーを借してもらって、何とか凌ぎます。ごめんなさい。

そんなこんなで辿り着いたエッフェル塔。ほとんど真下から見上げると、何だかとてつもない物が正に屹立している感じ。塔と言うよりは工場の鉄骨を思い浮かべます。それほどまでに重厚で、オレンジ色の暖かな光に照らし出されたその剥き出しの鉄骨が、どこか幻想的な印象を抱かせました。
エッフェル塔が建設された目的というのが、そもそも第四回パリ万博のモニュメントのため。1889年というフランス革命100周年の記念の年ということもあったんですが、金属産業の象徴でなければ、といったような目論見もあったようで、それでこの鋼鉄感も頷けます。

しかも、エッフェル塔は東京タワーと違って、真下から塔を見上げることが出来ます。下が完全にアーチ状になっていて通り抜けられるんですね。もうこれは下から見るしかないでしょ。テンションが一気に突き抜けます。で、下から見上げると益々謎の建造物。とにかくよく分からん圧倒的な物体がパリの街中にどでんとある、という感じ。不思議です。

エッフェル塔にはゴンドラみたいなエレベーターみたいな物があって、上に昇れるんですね。展望台的な。その日は風が強かったので一番上までは行けなかったんですが、とりあえず来たからには昇ってみるべきっしょ、となった一行。高所恐怖症のたいたいこと深谷さんだけが少々渋りますが、最終的にはなし崩し的に承諾です。

意外と速度の速いエレベーターに乗って展望台へ行ってみると、眼前には美しい夜景が広がっていました。東京のネオンの様に攻撃的に輝くわけではない、慎ましやかな、それでいて煌びやかな灯りです。セーヌの川の流れにチラチラと映る灯りもまた、風流でした。

その後、フランスの他の場所を訪れても思ったのですが、フランスの街灯の色って、ほとんどがオレンジ色。日本のような白い光ではないんですね。それがまた石造りの街並みとマッチして、いい雰囲気なんですね~。

予想通り風はさらに強く、底冷えのする寒さでしたが、そんな夜景を見ながら、思っていたこと。それは、今まで多くの日本人たちが、この芸術の都パリに夢と希望と野心を抱いて単身やって来て、今の自分と同じようにこの夜景を見ていたんだろうか、ということ。僕は大学で美術史を勉強していたんですが、洋画家を志す日本人たちは必ずパリに行き、有名な画家さんの弟子になるんですね。なんだなんだ、絵と言えばパリなのか?と思っていなくもなかった当時の僕ですが、本格的に学ぶならばやはりパリに出てこなければならなかったのでしょう。色んな人とも出会えますしね。ピカソだってパリに住んでいましたし。

そんな若き日の画家たちに思いを馳せていました。当時の人たちが、画家のように芸術を志した人たちが、日本人だろうがそうでなかろうが、貧困や希望や失望や不安や郷愁や望郷の念やその他諸々の思いを抱いてこの夜景を見ていたのだろうか、と考えるだけで、なぜか目頭が熱くなってきたのでした。ロマンチック。

ほんっとうに寒かったですけど、最高の経験でした。

余談ですが、エッフェル塔の下の辺りには、七色に光る謎の毒々しいエッフェル塔を売ろうとする、国籍不明の人たちが多数いました。ザ・観光地。

ホテルまではブラブラ散歩して帰りました。可愛いお店や、変な日本語の看板(OMOTEと書いてあるのに、その下にデカデカと『畳』と書いてあるインテリアショップ)などを発見したり。
途中からまた地下鉄に乗ってホテルに帰り着いたんですけど、その車中でなんと10ユーロ(約1600円)拾うという嬉しいハプニングが。その日の飲み代に消えましたけど。

~つづく~

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