フランス旅行記・その9


どうも、須貝です。

本番を終えて宿舎へ帰り、そのまま飲み会へ。フランスに留学しているアナという子の家へ遊びに行きます。このアナと相当仲良くなったんですが、飲み好きで踊り好きでお話好きな奴でございました。英語がペラペラだったんで、フランス語を通訳してもらったり、普通に話も出来たし、とても助かりました。

もう、とにかく皆飲む。ビールもワインも次から次へと空いていく。フランスでお芝居を勉強している学生さんなんかと一緒に飲みました。もう皆いい奴で、セバスチャンっていう超イケメンの十九歳の学生と仲良くなれて、もう本当にそいつがいい奴で、旅行の期間中も会うとハグ。お芝居の話したり、フランスの若者言葉を教えてもらったり(「ナポフトクォワ」とか)。楽しかったなぁ。本当にフランス語を話せるようになりたいなーって心から思いました。

で、途中からベルギーチームの連中も参加して、さらに飲み会は加速。こいつらもすげー飲む。そして下ネタばっかり話す。下ネタ大好き。下ネタの話って世界共通で通ずるんでしょうかね?

しこたま飲んで帰って寝て、次の日は街中の観光ございます。アナと、アナのルームメイトのエレナというごっつい美人さんに街を案内してもらいます。

ブザンソンは要塞の街で、三方が川に囲まれ、一方を崖と城砦で固めた堅牢な旧都。シタデルと呼ばれる石造りの城壁を見て回ったんですけど、こりゃあ攻める気も失せるわ、と当時の兵士に思いを寄せたり。とにかく崖で、平和が一番と思ったのでした。
そして、驚いたことに、そのシタデルは動物園でもあって、動物が堀やレンガの廃墟に住み着いているんですね。大っきい猿とか攻撃的な鳥とかでっかい角の鹿とか(僕らはアンクルホーンと名付けた)、普通に住んでいるんですね。なんか、ここはフランスだったよなぁ?と、ちょっとした錯覚に陥ります。

シタデルはちょっと山を登った所にあるんですけど、山というよりは丘くらいの高さなんですが、その麓に教会がありました。いやーもうそれが壮麗で、荘厳で、凄い。
教会の中に入ると、ひんやりとした空気がすっと肌に差します。石の冷たさとでもいうか、静寂が、ただ音がないというだけではなくて、その清らかさの持つ静寂とでもいうものが、教会内の空間に満ちています。

入り口から入った正面には全面に広がるステンドグラスと、美しいアーチが。アーチ好きの自分としては堪りません。説教を聴くための椅子がずらりと並び、薄暗い屋内は、蝋燭の炎でチラチラと仄明るい。周囲はずらりと、聖書に関連した場面の描かれた絵や聖人の肖像画で囲まれ、最後の晩餐の様子を表したレリーフやキリストの立像なども置いてありました。

何のための部屋かは分からないんですが、小さな部屋があって、そこに最後の晩餐の壁画の描かれた部屋があって、なんだかとても神妙な気持ちになりました。そして教会のステンドグラスに対面した一方には、黄金の巨大な十字架と、天使の彫刻が。すげー。

自分は全くキリスト教徒ではなく、キリスト教の文化圏にも暮らしてはいないわけですが、それなのになぜこれほどまでにこれらの作品が自分の心に訴えかけてくるのか、ということを考えたのですが、それは多分、ただ純粋にこれを信じたという人々の心がそこにはあって、その純朴さみたいなものが自分にも伝わってくるのではないかと思いました。

多分教育ということもあって、ヨーロッパの人たちは子供の頃から聖書の物語に接しているわけで、それらの物語は彼らにとっての共通認識なんですね。絵の中で誰がユダかというのがすぐに分かるように、言葉にしない所で伝わっている、感覚にも近い知識なのだと思います。だからこそ彼らが描くキリスト教の世界は僕らの実世界から遊離してはいないし、よく知っているからこそ、表現も自由です。これは、恐らく日本人には出来ないことですね。日本人の画家で聖書の場面を描いている作家が極端に少ないのは、こういうことがあるでしょう。やはり本場で本物に触れると、感動も一入。

もう一つ、これが一番大きいといつも思うんですけど、海外の絵を見る時にこれはいつも思うのですが、なぜ文化も生活している地域も描き方も違うのに、僕らはこれらの絵に感動出来るのだろう、ということを考えるのですが、それは、人間という生物が共通して揺さぶられる無意識の部分がやはりあって、真の芸術という奴が、それらに触れるものだからこそ、言葉や文化や人種を超えて分かり合えるものがあるのだと、そう思うんです。その無意識の部分が一体何なのか、それは分からないんですが。

その夜は韓国チームのお芝居を観ました。言葉が分からない…。しかしすげー役者がどこにでもいるもんですね。同い年くらいなんだけどなぁ。

その後、僕一人だけアナにバーに連れて行かれ(ほぼ生贄)、学生たちがごった返す熱狂の中へ。もう心ここにあらずな羊状態。言葉も分からぬ、知り合いもいない、多分俺よりもずっと年下の子らばっかりのはずなんだけど、怖い。フランス語で話しかけられるも、分からず。フランスでは両頬にキスをする挨拶をするんですけど、それもなんだかぎこちなくて恥ずかしくて、酒を飲んでも全く酔えず。まー面白かったですけどね。自分のあまりのチキンぶりに、落胆。ご愁傷様です。

帰りは無理矢理終バスで帰り(振り切り)、たまたま韓国チームと一緒になります。話したらとってもいい人たちでした。

~つづく~

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