今年一番の映画~まだ半年あるが~

好きな俳優を挙げろ、と言われたら、なぜか真っ先にハリウッドの俳優が挙がる、私であります。

そんな中で根強く好きなのがジム・キャリーで、「トゥルーマン・ショー」や「マジェスティック」といった素敵な映画の中でも輝く彼の才能ではありますが、やはり、「エース・ヴェンチュラ」が一番だ、などと考えていたのです。

しかし、彼のキャリアの中で絶対に一番だ、俳優としてもこれ以上ない素晴らしい演技だったと思わざるを得なかったのが、監督ミシェル・ゴンドリー、脚本チャーリー・カウフマンのコンビが贈る珠玉のラブストーリー、「エターナル・サンシャイン(Eternal Sunshine of The Spotless Mind)」でございます。

今現在2006年ですから、はっきり言って今頃レビューを書くのは明らかに遅いんですが、色々な勘違いがあったために観てなかったんですね。

まずは脚本がチャーリー・カウフマンだと知らなかった。「マルコヴィッチの穴」で好きになったんですが、「エターナルサンシャイン」は彼の最も素晴らしい脚本だと言ってもいい気がします。とにかく完璧。構成やキャラクター、プロット、セリフ、どれをとっても無駄がなく、交響曲のよう。全てのシーンに意味があり、今までのようにシニカルに男女関係を扱うこともなく(イライジャ・ウッドが多少そういった役を担っていた感はありますが。でもいい演技してたなぁ。ロード・オブ・ザ・リングなんて目じゃありません)、ロマンチックに、愛情深く人間を捉えていると思います。

そしてそれを最大限に生かしきり、映像化に成功した監督ミシェル・ゴンドリー。彼が監督だと言うことも知らなかった。
ミュージック・ビデオなんかはわりと観てまして、素晴らしい映像を撮る人だとは思ってたんですが、「ヒューマン・ネイチャー」なんかは映画作りの難しさのようなものを感じてしまって、彼の魅力が伝わってこなかったように思ったのですが、「エターナル・サンシャイン」は違いました。深い意味のある、情緒的な、美しい話を撮ったら、やっぱり彼の魅力が惹き出るんではないかと個人的には思うのです。

好きなシーンは、ジョエルが子供の頃を思い出す雨のシーン。現在(といっても記憶の中)と雨が降る彼の幼い日の思い出が互いに影響を及ぼしあって、現在のアパートの室内に雨が降り、幼い頃住んだ家の、屋根の波打ったプラスチックが、アパートのテーブルになり、とにかく細かい点まで趣向が凝らされているのです。最高に美しく、映像だけを見て泣きそうになったという自分としては非常に珍しいシーンです。
象の行進のシーンも好きですね。あれはたまたま通りがかったサーカスの一団をとっさに撮ったんだそうで。すごいね。

そしてラブストーリーだということと、ポスターのキラキラ具合に警戒してしまって(ラブストーリーは苦手です)、観ようと思いつつ観なかったこと。本当に過ちを犯しましたね~。

役者さんもまた、いいですね。
ケイト・ウィンスレットは「タイタニック」のイメージが強くて、そん時は優男とデブ女がカーセックスする話だと思ってたので、この作品を観て「こんなにきれいな人だったのか!」と驚いた次第で、自分が恥ずかしいですね。(同時にいかに「タイタニック」がクソかということも分かりました。好きな人にはごめんなさいですが)この映画の解説によく、ケイトが「ヒス女、ぶっ飛んだ役」を見事に演じた、なんてことが書いてありますが、僕はそう思えなくて、彼女が演じたクレメンタインがとても近しいような、共感の湧き上がるような親しみ深い人物に思えて、でもやっぱり冷静に考えるとおかしな女ではあるので、やはりそう思わされたことにケイトの技量があるのかなと思ったりもします。

そしてキルスティン・ダンスト。可愛い。嫁にしたいですね。
これは脚本の力でもあると思うのですが、博士(トム・ウィルキンソン)に対する愛情、過去には確実に存在した愛情が冒頭のシーンから伏線としてあって、それがいやらしくないのは彼女のうまさなのでしょう。

そしてもちろんジム・キャリーは彼独特のユーモアを損なうことなく、物事を沈思するような、物静かで優柔不断で秘密主義な男を演じきっています。彼が今まで演じてきた役の中でも、最も複雑な性格の持ち主の一人と言えるのではないでしょうか。「マン・オン・ザ・ムーン」で演じた役も複雑だったとは思いますが、こちらの方がより親しみ深いような。個人的な感想のせいもあるだろうけど。

そして音楽。ピアノで繰り返されるメインテーマ、そしてBECKの楽曲、この映画を最高に切なくしています。BECKの曲は二人の思い出の曲?という設定があるのでしょうか、遅回しで二人の思い出のシーンのバックに流されたりもしていますね。そういう細やかな演出が高い効果を与えていると思います。

なんだか言葉や表情、音楽の一音一音、シーンの一つ一つが心に沁み渡るような作品ですね。
まだ見ていない人にはネタバレ的な部分もありますが、たとえネタがばれようが、タイタニックが好きだろうが関係ありません。何度観ても泣ける映画です。何度観ても新たな発見がある、そんな映画です。

是非ご覧あれ。

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